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許されたのは、許しを乞うことだけだったのでしょう。
先日、週刊新潮など各誌に不倫・重婚・ストーカー疑惑を報じられ、元政治家の中川俊直氏が政務官を辞任、自民党を離党しました。この件について、フジテレビ系ワイドショー「直撃LIVE グッディ!」が、がん闘病中の妻・中川悦子氏の正座謝罪を放映、批判を浴びています(参考:ハフィントンポスト日本版)。
私も——違う人間なのに「同じ女性として」とか言ったりはしませんが——中川悦子氏の謝罪には、たいへん胸が痛みました。思い出したのは、2016年3月、自民党から出馬予定であった乙武洋匡氏の元妻・仁美氏が、乙武氏の不倫について「妻である私にも責任の一端がある」と謝罪したことです。
この記事の後半でまとめますが、仁美氏の謝罪以降、「不倫された妻がなぜか謝罪するパターン」は複数見られます。それに比して「不倫された夫が謝罪するパターン」は私の調べた限りでは見つからず、あったとしても恐らくは少ないので、なんていうか私はもう、ね、あの、正直ね、ぶっちゃけ言っちゃうとね、
女なめんな!!!!!!!!!!!!
とガチギレています。誰に対してなのかはよくわかりませんが、ガチギレています。
こうしてキレることで、確かに、私はスッキリするでしょう。でも、私がスッキリして終わりじゃあ、仕方ないわよね。なのでひとしきりキレたあと、午前いっぱいかけて、“ポスト乙武さん”の時代に著名人の夫に不倫された女性たち6人の謝罪声明をピックアップしました。彼女たちの声明を読み比べ、あらためて、「不倫された女が謝るということ」について考えてみたいと思います。
“このたびは、夫、乙武洋匡の行動が週刊誌で報じられた件につきまして、多くのみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び致します。このような事態を招いたことについては、妻である私にも責任の一端があると感じております。今日に至るまで二人でしっかり話し合った結果、3人の子どもたちのためにも、あらためて夫婦ともに歩んでいくことを強く決心致しました。本人はもちろん、私も深く反省しております。誠に申し訳ございませんでした。”
乙武洋匡氏の元妻、仁美さんによる声明(2016年3月。引用元:BLOGOS)
これが元祖だったのかはわかりませんが、言うなれば「不倫された妻が謝罪する流れ」を加速させたのが、やはり、この声明であったのではないかと私は思っています。夫の責任を私も負います、という論理での謝罪は、次の例と通じています。
“主人の行為によって大変ご迷惑をおかけしたことを、心から、主人ともども私から、お詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。主人がしてしまったことに対しては、連帯責任と言ったらおかしいですけれども、少なくとも私が主人の仕事の手伝いをさせていただいていることもありますので、私は本当にお詫びの気持ちでいっぱいです。”
中川俊直氏の妻、中川悦子氏による声明(2017年4月。フジテレビ系「直撃LIVE グッディ!」より)
仁美氏・悦子氏のお二人には、「○○の妻」というサポート役ポジションであったという共通点があります。それが悪いとはもちろん言いませんし、パートナーを裏方で支える立場を自分の意思で選ぶ人は男女問わずいます。しかし、「女だからサポート役」→「サポート役だから自分の意見が言えない」というスパイラルになってしまっているのであれば、残念です。日本国憲法が言うところの、「個人の尊厳と両性の本質的平等」が奪われてしまっていることになる。
現に、夫のサポート役じゃなく自分で稼いでる女性は、あんまり謝ってないんですよね。宮崎謙介元議員の不倫報道を受けた金子めぐみ議員は、「恥をかいてきなさい」と一喝したといいますし、チャラ男キャラなタレント・アレク氏を夫に持つ会社経営者の川崎希氏は、たびたび“お仕置き”をブログネタにしています。たとえばこれとか。
そうそう、不倫されて謝る女性芸能人もいますね。いくつかまとめて読んでみましょう。
「この度の報道の件で、みなさまにはご心配、ご迷惑をお掛け致しまして大変申し訳ございませんでした」菊地勲氏の不倫報道を受けて、小倉優子氏(2016年8月)
「この度は、多大なるご心配とご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした」中村橋之助氏の不倫報道を受けて、三田寛子氏(2016年9月)
「この度は、報道により家庭のことでお騒がせして、大変申し訳ありませんでした」下鳥直之氏の不倫報道を受けて、安田美沙子氏(2016年12月)
「この度は私たち夫婦の問題で多大なるご心配、ご迷惑をお掛けしております」袴田吉彦氏の不倫報道を受けて、河中あい氏(2017年1月)
みんなびっくりするほど同じこと言ってますけど、要するに、「夫を不倫させちゃってごめんなさい」じゃないんですよね。「世を騒がせてごめんなさい」なんですよね。彼女たちは、夫を別個の人間として切り離しており、“妻としての責任”で謝ったりはしない。じゃあ、「夫を不倫させた“妻としての責任”ですごめんなさい」という謝罪はいったいなんなのか。
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