赤坂のカエル

第15回】イラストレーター・中川淳一郎

「フリーランスはどんな仕事でも断るな!」。本連載を読まれている方ならお馴染みの中川淳一郎さんのフレーズですが、そんな中川さんでもこれは受けてよかったのか? と今でも考える仕事があるそうです。オーストラリア人美女の元カノに頼まれて受けてはみたものの、その仕事内容が……。ちょっぴり甘い期待もしていた中川さんの、ほろ苦い顛末とはなんでしょうか?

オーストラリア人の美女・ジェニー

フリーランスは何でもやれ! というのが今の心情ではあるものの、「さすがにこりゃないだろ」という仕事をしたことがある。2003年を間近に迎えた寒い夜、ボロアパートでガスレンジでお湯を沸かして暖を取っていた時に突然電話があった。この時は暖房器具は文芸春秋社の人が捨てようと思っていたボロい電気ストーブが一つあるだけで、築50年のボロアパートにそれは寒すぎた。

数年ぶりのジェニーからだった。彼女とは1995年から1998年まで交際をしていた。その内のほとんどは遠距離交際だった。大学の交換留学生だった彼女は、オーストラリア人。一橋大学の敷地の隅っこにある留学生の寮に住んでいたのだが、1995年7月、私が学内の宴会で酔っぱらい、それ以上歩けなくなった時に寮の1階にあるソファーで寝ていたら「大丈夫ですか?」と声をかけてきたのが彼女だった。

「うわ、なんつー美女だ!」と思い一目ボレをし、そこで自己紹介をしたら、今度二人で飲むことになり、その飲みの席で付き合うことが決まり、一緒に旅行をすることが決定し、台湾人の女性留学生と3人で伊勢、京都、大阪、松山、広島と旅行をした。

二人はその後も博多・長崎と旅行をしたのだが、私はコンサルティング・ファームのマッキンゼーでのインターンに合格していたため、8月21日から東京にいる必要があり、広島で離脱したのだった。二人は「九州が一番楽しかった」と言い、なんだか複雑な気持ちになった。「お前がいない方が楽しいよ」ということかっ! と思ったのである。

1996年3月に彼女はオーストラリアへ帰り、しばらくは手紙やメールのやり取りがあった後、1998年に就職のため、来日した。最初は私たちの関係はうまく行っていたのだが、私がサッカーW杯フランス大会ばかり観て相手をしなかったこともあり、別れられてしまった。

それから3年半が経過した時の電話だったのだ。当時、某企業から子会社に出向していた彼女はこう言った。

「ジュン、あなたはイラストとか描けるよね? 今度私たちの会社で、世界のデジタルクリエーターを紹介するサイトを立ち上げるんだけど、そこで私のコーナーも立ちあがるの。そこでイラストを各ページに作りたいの。あなたはクリエイティブな人だから、絵が描けると思うけど、どう?」

私は自分がクリエイティブだとはまったく思ってもいなかったが、ついカネ欲しさから「できるよ!」と言ってしまった。今から考えるといくら元恋人とはいえ、こんなに軽々しくウケるのはどうかしている。というか、彼女と3年間も付き合っていたというのに、彼女は私のことをあまりにも知らなすぎるではないか!

その時の条件は、以下の通り。

・1ヶ月に1回、コーナーのトップページの画像は変更する。季節感が出るイラストを配置する。
・すべての記事に、本文と関連したイラストを掲載する。記事は週に2本程度。

気になるギャラだが、ジェニーからは「1枚4000円でどう?」と言われた。正直これが高いのか安いのかはよく分からないが、私の目論見としては週2枚、月に9枚描いて36000円の安定収入になることは有難かった。3万円の家賃をすべてまかなえるこの金額を獲得できることを喜び、彼女には「やるぜ。任せとけ」と言った。

一橋世界ヘビー級チャンピオン・常見陽平

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ライター、編集者、PRプランナーとして『NEWSポストセブン』などのニュースサイトの編集を手がける中川淳一郎さんのエッセイ連載! 日本のウェブ業界で、強烈な存在感を放つ中川淳一郎は、いかにして中川淳一郎になったのか。その生き様を赤裸々...もっと読む

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コメント

niwaringo クソ面白い 5年以上前 replyretweetfavorite

sadaaki フリーランスはなんでも「できます」というのがいいと言いますが、イラストを「描ける」と言ってしまった中川さん、これはかなりすごい作品ですよ! @unkotaberuno 5年以上前 replyretweetfavorite

sasakyu339 プロ研スポーツ懐かしい。当時学内唯一の言論誌(?)だったw → 5年以上前 replyretweetfavorite

takanokawa 僕はこのイラストを見て腹を抱えて笑った。 5年以上前 replyretweetfavorite