破綻のない結婚生活のヒント/共感を大切にする「つながり婚」の時代【第48回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。いま、結婚のあり方もまわりとの「つながり重視」に変わりつつあります。

破綻のない結婚生活のヒント

『安井かずみがいた時代』(島﨑今日子、集英社)という評伝があります。安井かずみさんは昭和のころに一世を風靡した作詞家で、「危険なふたり」「わたしの城下町」「よろしく哀愁」など膨大な数のヒット曲を書いています。

 1960年代からニューヨークやヨーロッパを遊んでまわり、伝説的なマンション、川口アパートメントに住まいを構えて、加賀まりこさんやコシノジュンコさんと交流し、自由気ままな生活をしていました。当時としては唯一無比のイタリアンレストランだった飯倉片町の「キャンティ」の常連だったことでも有名です。

 ここは昔、一般人は店に入るのもはばかられるほどのセレブ御用達レストランでした。「キャンティ」はいまもあって、しみじみと美味しい料理を提供してくれるのでわたしは好きですが、セレブ的な雰囲気は時代とともに過ぎ去って、ゆっくり食事をできるのどかな老舗になっています。

 安井かずみさんは、「どこまでも自由で、あくまで奔放で、危なく、アンニュイな魅力に溢れた女だった」。1977年に、8歳年下のミュージシャン加藤和彦さんと再婚しました。2人は「日本一カッコいいカップル」と呼ばれ、夕食はかならず着替えをして夫婦でテーブルを囲み、年に2回は長い休暇を海外ですごして、憧れの的になりました。彼女の好みも変わって、リビングに置いていた素敵な白木のテーブルは、ココ・シャネルの家に置かれているような派手なテーブルに変わり、身にまとうコートも高級ブランドのエルメスになったといいます。そして以前からの親友たちとはだんだんと疎遠になり、夫を中心に人生がまわっていくようになります。夫婦だけの閉じた関係へと落ち込んでいったのです。その関係は、加藤さんの不倫をきっかけに均衡を崩しはじめます。

『安井かずみがいた時代』はこう記述しています。

愛して欲しいと願った瞬間、人は自由を手放すのである。ただ1人の男が他の女に気持ちを移した瞬間に、2人のパワー・バランスは完全に逆転し、あの自由奔放な人でさえ自我を折り、夫の顔色をうかがいはじめて萎縮していったのだ。

 彼女の本の多くを担当し、私生活もよく知っていた編集者、矢島祥子さんは同書の中でこう語っています。

「完璧な夫婦を演じるのは、大変だったでしょう。安井さんに加藤さんと別れるという選択肢があれば、もっと違う人生があったのではと思います。でも、きっと無理だったんですよね」

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

初回を読む
そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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naon_56 @tos メモ。 2年以上前 replyretweetfavorite

shimijimicchi 破綻のない結婚生活のヒント/共感を大切にする「つながり婚」の時代 https://t.co/lQxYUazmkC 今の結婚式は、参列者のために開催する感じ。 自分が今特に関心があるからだろうけど、こんな風に結婚式の歴史を調べて、その時代の価値観を見出せたら楽しそう! 2年以上前 replyretweetfavorite

SasakiTakahiro 「2人だけ」から「仲間たちと一緒に」へ。 2年以上前 replyretweetfavorite

ImageMansion https://t.co/ZTzk6BQLKM 2年以上前 replyretweetfavorite