開かれたコミュニティ
日本でも世界でも、さまざまな土地で素晴らしい食材や食べ物がつくられている。日本酒はやっぱり冬の寒さがキーンとするぐらいの土地のものが旨い。赤道のあたりの熱帯にいけば、飛びきり美味しい珈琲がある。そういう土地の数々と、交流し、交換しながら生活していく。そういうことがグローバリゼーションによっていま現実に可能になってきているし、そういう交換関係を実践する人たちが増えてきているのです。
そして同時にこのような「外とのオープンな関係」というのは、人間関係をどう持続させるかということについても重要なポイントです。チコの話。
「設立から30年も経ったコミューンに行ってみたことがあるけど、限界集落と同じ世代交代の問題が出てきてた。そこで育った二世は、かならず都会に出たくなるんですよ。『ここはいいところだけど、もっと広い世界も見てみたい』って。そうすると若い人が流出していって、共同体が成り立たなくなってしまう。だから共同体には更新と代謝がとても重要で、流入してくる移民がいないとダメなんです」
サイハテは住人たちが外部を利用してビジネスをしているのと同時に、外部からの移民をつねに受け入れる準備をしています。ビジターが宿泊できるドミトリーやゲストハウスも用意されていて、短期滞在したり、あるいはもう少し長く暮らしてみて様子を見たりして、いろんな人たちが参加することができるようになっているのです。だからここでは、スタートした当初からの住人や、途中から参加してきた住人、最近やって来た人、ビジターとさまざまな人たちが渾然と暮らしています。
きびしい自給自足と閉鎖的な人間関係で自己完結するのではなく、外部を利用し、外部と交わることで生まれる心地よさ。これこそが実は、前章でさんざん述べてきた「ゆるゆる」の本質なのだとわたしは考えています。つまり「ゆるゆる」は企業が顧客に提供する過剰なサービスなのではなく、企業も人々も同じ対等な立場で、相互作用によって連携していく。そういう開かれたネットワーク的な関係を実感し、ともに育てていくことこそが、「ゆるゆる」ということなのです。この結論を、わたしはサイハテのネットワーク観から学ぶことができました。
外部に閉じたコミュニティは、孤立していて一匹狼的でクールかもしれないけれど、持続性はない。
開かれたコミュニティこそが、反逆クールの陥穽から脱して、外部とのネットワークをつくりあげることで持続可能なライフスタイルを実現することができるのです。
シンクとチコの話をずっと聞いていたら、だいぶいっぱいいっぱいになってきました。ちょっと休憩して、お昼ご飯でもつくりましょうか。今日はカレーライスにしてみます。
日本式のカレーのつくりかたは千差万別で、人によっては野菜ジュースを入れたり、隠し味にチョコレートやにんにくを入れたりと、さまざまな創意工夫の余地のある料理です。市販のカレールーに書かれてるレシピの通りが実はいちばん美味しいという説もありますが、わたしの提案は、「軽い食感のカレー」。カレールーって小麦粉がたっぷり入っているので、箱のレシピ通りにつくると少し重くてお腹が張ってしまう感じがあります。それを避ける方法として、ルーはスパイス程度につかいましょうという提案です。
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