わたしたちが都市に求めるもの【第40回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。人が少なくなってくると、都市機能も集約させるほうが効率的。実際にそのような変化が起き始めています。

わたしたちが都市に求めるもの

 この都市の変化は、わたしたちの考える「好きな街」の感覚の変化にも現れています。

 前に紹介したナオミ・クラインのトロントの工場街のような反逆クール的な好みでは、「外へ、外へ」と大衆から逃れることがカッコよかった。東京でいえば、渋谷や新宿が大衆に受けているのであれば、大衆のいない六本木を好む。それに憧れて人々が六本木に押し寄せてくるようになると、さらに逃げて西麻布や飯倉片町といったアウトサイドな街に向かう。

 1985年に、とんねるずが「雨の西麻布」という歌をヒットさせました。作詞した秋元康さんは、有名な場所ではない地名をあえてつかったそうです。当時は西麻布はいまほど知られておらず、六本木駅からも広尾駅からも遠く不便な場所で、知る人ぞ知る遊び場でした。これこそまさに反逆クール的発想ですね。

 しかしこうした「わたしたちだけが知っている隠れ家」「大衆の知らない凄い土地」という考えかたはいまの若い世代では影を潜め、そんなことはどうでもよくなっている。そうではなく、ただまったりと暮らせる居心地の良い街で暮らしたいと思う人たちが増えています。

 たとえば最近の東京では、三軒茶屋や西荻窪、清澄白河といった街が人気ですが、これらの街を好んでいる人たちにはエリート意識なんて毛頭ないでしょうし、自分たちが大衆社会から脱出してこの街を選んだなどという発想もないでしょう。三軒茶屋や西荻窪には小さな個人経営の店がたくさんあり、都心にもそこそこ近く、でも観光地ではないので週末の異常な人混みもなく、居心地の良さがすばらしい。それが選ばれる理由になっているのです。

 マーケッターの三浦展さんは、「なぜ今人々は都心に住居を求めたがるのか?」というウェブのインタビュー記事で、これから好まれる街についてこう語られています。

「これからの街づくりは、女の子の消費力、ファッションなどに頼るだけでは、もうダメだと思います。これからは、面白くはたらける場所として選ばれること。そこではたらきながら、子育ても楽しくできること。外国人観光客が訪問したい街であること。モノじゃなくて、人と出会える街。住んでいて楽しい。はたらいて楽しい。これが生き残る街の条件となるでしょう」

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 約3年前 replyretweetfavorite

emimura https://t.co/DcpGiAQd6m 約3年前 replyretweetfavorite

_Eugene___ 現在の都市論。 約3年前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao 「大衆の知らない隠れ家のような街がカッコいい」という20世紀的感覚は終わりつつあり、居心地の良さが最重要に。 約3年前 replyretweetfavorite