東京はいま、住みやすく静かな街【第39回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。今回は、人口の移り変わりを追いながら、「都市観」をアップデートしていきます。

東京はいま、住みやすく静かな街

 ルソーの当時と、現代のグレイザーとでは都市観が大きく変わっています。

 その背景には、都市のありかたが20世紀なかばぐらいから大きく変容してきたことがあります。ひとことでいえば、劣悪な都市生活が、快適で居心地良いものへと変わったのです。

 最初の大きな原動力は、第二次産業革命によって引き起こされたモータリゼーションでした。多くの労働者が自動車を所有するようになり、これによって郊外で生活することが可能になったのです。人口が集中しすぎて過密になり、住宅価格も高騰していた都心部を離れて、人々は郊外にのがれるようになったのです。それまでの「都市と田園」という二者選択から、「都市と郊外と田園」という3つの選択肢に変わってきたのです。

 日本では、戦後の高度経済成長で首都圏に人口が流入し、住宅が極端に不足した時期がありました。家族5人で4畳半ひと間のアパートの部屋に住む、などというのも特別ではないほど劣悪な住宅事情だったのです。これを緩和するため政府は持ち家政策を推進し、郊外の住宅地開発も急速に進められました。象徴的なのは東京の西の丘陵地帯に広がる多摩ニュータウンで、1971年から入居がはじまりました。このころから、伝統的な日本家屋ではなく、小さいながらもリビング兼ダイニングの「DK」を備えてテーブルと椅子で暮らす新しいライフスタイルがもてはやされるようになりました。

 このころ、「住宅すごろく」という不思議な流行語も生まれました。上京して都会のアパートでひとり暮らしをはじめ、結婚して賃貸マンションに住み、やがて分譲マンションを購入。そして最終的にはマンションを転売し、郊外に庭付きの戸建て住宅を建てるというのが「人生のあがり」とすごろくになぞらえられたのです。多くの人が、生涯の人生設計を立てられると信じていた時代でした。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

sasakitoshinao かつてのコンクリートジャングルから、バブル期を経て住み心地の良い場所へ。東京に住むということの変遷を振り返る。 約2年前 replyretweetfavorite

blue_red_violet 人は当分相変わらず、溢れ返ったみたいに行き交うのかな…… 約2年前 replyretweetfavorite

anonimastudio 「コンクリートジャングル」「東京砂漠」といったイメージは、もはや過去のもの。都心への回帰がすすんでいます。 @cakes_news: 約2年前 replyretweetfavorite

Egure_Hotate ( *´ω`)ほんまこれ。んで広がりすぎたベッドタウンを30年後に買い叩いきリフォームして住みぬける計画をですね。 :  約2年前 replyretweetfavorite