ブス図鑑

常識にとらわれない」ことに関してはブスさんの右に出る者はいない

会話の糸口に「好きな食べ物」を聞くことも多いように、食べ物の話題はコミュニケーションを円滑にしてくれます。というわけで、ブスについて書くにも食べ物を絡めたらよいのではないか、と担当は思ったのです。ブスと食べ物の融合。その結果はいかに……!?

確かに、神の気まぐれでできたとしか思えない造形のブスもいる

前回「からあげブス」という難テーマを乗り越えた俺に、もう怖いものは何もない。
そう思っていた。担当が出してきたネタリストの「からあげブス」の下に書かれている「とんかつブス」という文字を見るまでは。

すぐさま「貴様やる気はあるのか!」と心で思いながら、無言で担当を何回も殴ろうと思ったが、やめた。「じゃあ、お前はあるのか!」と言われたら困るからだ。
しかし、その下に「スイーツブス」「白米ブス」と書かれているのを見て、殺る気がみなぎってきた。
担当いわく「食べ物系ブス」という括りでテーマを出してみたらしい。その数16個である。

書いている途中で、食べ物に申し訳ないと思わなかったのだろうか。「食い物を粗末にしてはいけない」なんて人として基本中の基本だ。
中には「シェフの気まぐれブス」などという、言葉の面白さ以外、何も広がらないブスまで書かれている。確かに、神の気まぐれでできたとしか思えない造形のブスもいる。真剣に作ってソレなら、神は今すぐコック帽を脱いで、すき家とか行ったほうがいい。

さすがに食い物ブスが連続するのは胃に悪い。よって、次のテーマ項目に行くことにした。
そこには「塩顔ブス」「しょうゆ顔ブス」、そしてその次には「肉食系ブス」「草食系ブス」と書かれていた。
もしかして担当は腹が減っているのではないだろうか。とりあえずラードを10ガロンぐらい飲んでからやり直してほしい(人生を)。

どんな味でも「とどまることを知らない」のがブスさんである


しかし、一言でブスと言ってもやはり色々あるのだ。同じ波が二度と来ないように、同じブスも二つはない。ただ誰も乗らないだけである。
もし、同じブスが二回来たということがあれば、それは同一ブスが振り子かよ、というぐらい行ったり来たりしているだけだ。

古来より、人の顔を調味料にたとえる手法はあった。そして最近は、オチにオリーブオイル顔として速水もこみちがログインしてきた状態だ。
これはもちろんブスにも使える。しかし何せブスである。しょっぱかったり、甘かったりはするが、「全部不味い」という状態だ。

例えば、塩顔ブスなら「あっさり系の薄めの顔のブス」ということになるが、ブスの場合は「薄い」などという次元を越えて、眉毛が毛根からない等、「足りない」ではなく「無」であり、味がなさすぎて、入れてないものの味が出てきてしまっているブスのことだ。
もしくは、こねすぎて手汗で塩味になってしまっているブスだ。

このように、どんな味でも「とどまることを知らない」のがブスさんである。
人は料理を作るとき、甘かろうが辛かろうが、とりあえずちょうど良い味、少なくとも人が食えるものを作ろうと思うだろう。

ブスさんの顔はそんな、ひよった精神で出来ていない。
もこみちだって、さもオリーブオイルを過剰に使っているかのように見えるが、あれはイタリアンからすると適量らしい。
今まで、もこみちがスタッフの制止をふりきり、羽交い絞めにされながらも、料理をオリーブの海にしている回を見たことがあるだろうか。

ブスさんというのは、毎回、神が止めにかかるスタッフをちぎっては投げ、ちぎっては投げして、ようやく生み出した気合いの入った一品なのである。

ブスさんは常人がブレーキを踏むラインをやすやすと超える「ブサイクチキンレースの王者」

もちろんそれは、持って生まれた顔だけではない。
時々、上野動物園にいそうな、フレンズになりたくない方の「けもの」みたいな化粧をした女がいるだろう。あれもそうだ。
化粧なんて、やろうと思えば幾らでも盛れる。それを凡人は「このぐらいがちょうどいいだろう」と途中でやめてしまうのだ。もう「投げ出してしまった」と言っても過言ではない。
もちろん、ブスさんは止まらない。最後までやりきる。

また、固定観念にもとらわれない。アイラインだからといって「ライン(線)」にしなければいけないという道理はない。「面」の段階にまで踏み込んでいるブスさんはいくらでもいる。

このように、「常識にとらわれない」ことに関してはブスさんの右に出る者はいない。ビジュアルの非常識ぶりを見れば一目瞭然だ。
ブスさんは、常人が「これ以上は無理だ」とブレーキを踏むラインをやすやすと超えるのである。つまり「ブサイクチキンレースの王者」なのだ。

結局、塩だろうが、しょうゆだろうが、口に入れられるうちは、ブスにさえ入らないような気がする。

ちなみに、しょうゆは1リットルぐらい飲むと致死量になるらしいので、しょうゆ顔のブスを名乗りたかったら、最低しょうゆ要素が1リットル含まれていないとダメだ。
どうしても合格したければボクシングみたいに、計量前に、しょうゆを1リットル飲む(この程度で死ぬブスさんではない)か、新弟子検査みたいに、頭にしょうゆを注入して挑むしかない。それくらいシビアなのだ。

つまり、「食べ物」のうちはブスではない。「毒物」になってからがスタートである。
そう書くと、担当は「砒素ブス」とか「トリカブトブス」とか送ってくるに決まっている。その前に、静脈に1リットルぐらいオリーブオイルを注入してやりたいと思う。


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カレー沢薫

「ブスに厳しいブス」と自負し、ブスのことになると、どこまでも熱くなりすぎるカレー沢薫さん。この連載コラム「ブス図鑑」は、漫画『アンモラル・カスタマイズZ』発売時の販促として「1日1ブス」を掲げ、読む者に涙と笑いを与えた同名の特設ブログ...もっと読む

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コメント

dokusyoneko32 神でも筆の誤り 3日前 replyretweetfavorite

rosia29  ブス図鑑も連載再開 毎週更新(予定)」しております 3日前 replyretweetfavorite

nekokainanako カレー沢薫さんといえば、色んなタグがあるけれど #金のかかったブス のインパクトの強さよ。そして私は投資家だと思う。 6日前 replyretweetfavorite

kodelir 文中に出てくる「どうしても合格したければ」というフレーズ、いったい何になんだwww 6日前 replyretweetfavorite