創作講座に参加する3つのメリット。『SFの書き方』あれこれ

2016年4月、大森望さんを主任講師にむかえて開講した「ゲンロン 大森望 SF創作講座」。第一線の作家陣がSFとは何か、小説はいかに書くかを語る豪華講義を採録のほか、課題と受講生たちの梗概・実作例、大森さんによる付録エッセイ「SF作家になる方法」も収録する超実践的ガイドブック『SFの書き方』が本日発売です。それを記念して、今月25日発売のSFマガジンに掲載される「大森望の新SF観光局」を先行公開! 同時公開の高木刑さんのインタビュウとあわせてお楽しみください。

 いまからちょうど1年前にはじまった「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の第1期が、去る3月16日の第1回ゲンロンSF新人賞公開選考会(最終課題審査会)をもってつつがなく終了。高木刑「ガルシア・デ・マローネスによって救済される惑星」が同賞の正賞を射止め、高橋文樹「昨日までのこと」がゲスト選考委員特別賞にあたる飛浩隆賞を受賞した。正賞受賞作は、いずれ改稿を経て、9月に出る〈ゲンロン〉6号に掲載される予定。

 しかしそれよりも早く、1年間の講義内容をまとめた『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』本が4月下旬に早川書房から刊行。同書には受講生の実作例2篇が収録されているが、その片方は、H・G・ウエルズ『宇宙戦争』とアーネスト・シートン「狼王ロボ」(『シートン動物記』の一篇)をマッシュアップした高木刑「コランポーの王は死んだ」なので、(作例という扱いながら)ひと足先にこちらでデビューした格好になる(もう一篇は、ゲスト講師の円城塔に高く評価された豪快なバカSF、崎田和香子「二本目のキュウリの謎、あるいはバートレット教授はなぜ時空犯罪者を支持することにしたのか?」)。


『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』

 もっとも、ゲンロンスクールは、受講生の提出課題がすべてウェブ上で公開されるシステムなので、作品が世間の目に触れているという意味では、全受講生がとっくにSF媒体デビューを果たしている。東浩紀が『SFの書き方』の序文で書いているとおり、ある意味、〝受講イコールデビュー〟なのである。いやいや、そんなこと言ったら、「小説家になろう」だって「エブリスタ」だって「カクヨム」だってKDPだってデビューでしょ! というのはその通りですが、第一線のSF作家と編集者に講評される(かもしれない)という特典がのっかるうえ、同じ受講生や熱心な講座ウォッチャーからも読まれてSNSやツイキャスで言及される。ゲンロンSF創作講座の提出課題というだけでそれなりの注目度が得られるわけで、これはけっこう大きい。

 オースン・スコット・カードは、 How to Write Science Fiction and Fantasy (Writer's Digest Books, 1990)という本の中で、SFの創作講座に参加するメリットとして、以下の3つを挙げている。

①仲間同僚や家族から、「そんな突拍子もない話ばっか書いてて時間の無駄だと思わないのか」と冷たい視線を浴びつづけている人にとって、仲間の作家志望者との出会いは精神衛生によろしい。

②締切アマチュアの場合、納期が決まっていないからつい原稿に向かう時間が少なくなるし、たとえ書いても、しつこくいじりまわしていつまでも完成させない傾向がある。しかし、講座に提出するという目標があれば、それに向けてがんばれる。

③読者他人に原稿を読んで批評してもらえるだけでも、大きな慰めになる。

 この3点に関しては、ゲンロンSF創作講座にもそのままあてはまる。この講座では、提示されたテーマに合わせて、自分が書きたい作品の梗概(あらすじを含む企画書のようなもの)をまず提出。それが梗概審査で上位3~4本に入れば、3週間以内に実作を書くことを求められる(というか、実作を出せば、次回の講座で講評してもらえる)。この締切に合わせて50枚前後の短篇を仕上げるのは、アマチュアにはけっこう高いハードルだと思うんですが、意外にも、梗概審査を通過したのに実作を出せなかったケースは、1年間を通してほとんどなかった。高額の受講料を払っている以上、当然とはいえ、受講生諸氏の本気度の高さにあらためて驚きました。

 ひとつ断っておくと、『SFの書き方』という書名ながら、『「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』はいわゆるハウツー本とは趣が違う。東浩紀、長谷敏司、冲方丁、藤井太洋、宮内悠介、法月綸太郎、新井素子、円城塔、小川一水、山田正紀のゲスト講師陣による講義パートは、「知性」「情報」「家族」「宇宙」など各回のテーマに即して大森がざっくばらんに話を聞くインタビュー形式(ただし第1回は、東氏が聞き手になって、大森と東京創元社・小浜徹也氏が日本SFの流れをざっとおさらいする歴史篇。また宮内回については、講評部分の採録になっている)。藤井さんや冲方さんがかなり実践的な話をしている箇所もあるが、小説の書き方を細かく指導するというより、SFのジャンル的な特性や勘所について語るものが多い。その意味では、SFファンなら、小説を書くつもりがなくてもけっこう楽しく読めるはず。


『SFの書き方』目次

 ちなみに『SFの書き方』というタイトルにしたのは、日本推理作家協会『ミステリーの書き方』(幻冬舎文庫)を意識してのことですが、古いSFファンならご承知のとおり、かつて講談社からまったく同じ題名の本が出ている。アメリカSF作家協会『SFの書き方』(小隅黎監訳、1984年)がそれ。前述したカードの本と同じWriter's Digest Booksから一九七六年に出た Writing and Selling Science Fiction の全訳で、C・L・グラント、ケイト・ウィルヘルム、ポール・アンダースン、ジェリイ・パーネル、ガードナー・ドゾワ、ジョージ・R・R・マーティンなど十一人が、「SFのマーケット」「登場人物について」「未来世界の構築」「SFにおける命名技法」「エイリアンの創造」その他のテーマで寄稿している。この本もあまり実用的には見えないが、読み物としては抜群に面白いので、手頃な値段で見つかれば古本で買ってみることをおすすめする。

最後はふたたびカード師の本から、作家志望者の心得7箇条を引用しよう。いわく、

  • 規則正しい生活を心がけよ
  • 体を大切に
  • カフェイン、アルコール、ドラッグ等々に頼るべからず
  • 忍耐心を持て
  • 近道をさがすな
  • 他人と競争するな、他人と自分をくらべるな
  • 視野を広く持て


だそうです。




『SFの書き方』刊行記念 大森望氏×長谷敏司氏 トーク・サイン会開催決定!

「ゲンロン 大森望 SF創作講座 池袋特別講義」
〔日時〕2017年5月20日(土)14:00~(開場 13:45)
〔場所〕三省堂書店池袋本店書籍館4階イベントスペース「Reading Together」
〔募集人員〕40名(申し込み先着順)※定員になり次第、締め切らせていただきます。

詳細はハヤカワ・オンライン、または三省堂書店公式サイトまで。

SFマガジン

この連載について

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大森望の新SF観光局・cakes出張版

大森望

翻訳・解説・エッセイ・コラムと、SF界のオシゴトを縦横無尽にばりばりこなす超人・大森望氏。氏の〈SFマガジン〉誌上の連載コラム「大森望の新SF観光局」がcakesに出張! 知りたかったSF界のあれやこれやをcakesでもおたのしみいた...もっと読む

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コメント

masumoto_ 「SF創作講座」に参加しておりましたが、下記記事の「3つのメリット」は、その通りだと感じました。 5日前 replyretweetfavorite

donkeys__ears 「同じ受講生や熱心な講座ウォッチャーからも読まれてSNSやツイキャスで言及される。ゲンロンSF 6日前 replyretweetfavorite

tokuhisan 最後のは「作家志望者の心得7箇条」というより、たんにモルモン教の教義なんじゃないかな……w → 6日前 replyretweetfavorite

facet31 読んだ。 6日前 replyretweetfavorite