なぜ「N」? N高の命名ウラ話

「高校をつくる」。言葉で言うのは簡単ですが、新しい学校の設置認可をとるのは、並大抵の苦労ではありません。校舎となる建物を探し、申請のための分厚い書類を揃え、地元の学校関係者の信頼を得て、教員をリクルートし、生徒を募集する。間にさまざまな困難が立ちはだかる上に、今回N高が目指したのは、準備期間1年半での開校でした。不可能と思われた最短コースでの学校づくり。その軌跡を追った『ネットの高校、はじめました』の第3章を、特別掲載いたします。

なぜ「N」? N高の命名

奥平さんが沖縄で奮闘しているあいだ、ドワンゴでは教育事業の実績とノウハウを得るためにバンタンを買収。元文部科学副大臣、東京大学・慶應義塾大学教授の鈴木寛さんに新しくつくる高校の顧問についてもらうなど、側面的なバックアップをおこなった。

そして、大事な仕事として高校の命名があった。学校の名前というのは、公立であれば校舎がある地域の名がついていることが多い。しかし、広域の通信制高校というのは、生徒募集は全国が対象になる。そのため、イメージを表すような抽象的な校名がよく採用される。それらのなかに埋もれたくない、と考えていた。会議中、立ち上げメンバーの一人が、「アルファベット一文字というのはどうですか。例えば、究極の高校という意味で『Z高校』とか」と提案した。

それはおもしろい、ということになったのだが、Zだと既存の教育サービス「Z会」とかぶってしまう。じゃあ、別のアルファベットだと何がいいだろう。うーん、うーんと悩むうち、「Z」を倒すと「N」になるということに気がついた。Nは「ニコニコ」のNであり、ネットの「N」でもある。これはいいんじゃないか。 「NってAからZの真ん中でもあるし、いろんな意味を重ねられるんですよね。数学で自然数を表すこともあるし、星新一のショートショートでも『エヌ氏』と名前で使われていたりする。そういう、ニュートラルでありながらいろんな使いみちがあるところがいいなと思いました」(川上会長)


N高等学校のロゴ

ちなみに、「N高等学校」という名前で沖縄県の担当者に申請書を提出したら、「ああ、まだ名前は仮称なんですね」と返ってきた。奥平さんが「いや、これが正式な名前なんです」と言うと、担当者は30秒くらい固まった。沈黙の後、彼女が言った言葉は「まあ、いいですけどね」。まったく納得していないのがよくわかる答えだった。

奥平さんは、申請書を提出した後、今度は地元の教育関係者と信頼関係を築くため、たくさんの人に会い、酒を酌み交わした。学校法人とはいえ、企業が主体となってつくる学校は利益重視になるのではないか。そうした懸念は、KADOKAWAのこれまでの教育関連書籍の実績が払拭してくれた。中島さんは、沖縄の教科書を扱う会社に出向いたときに「角川(歴彦)さんはお元気ですか?」と聞かれた。角川歴彦会長は、KADOKAWAが教科書を出版していた若かりし頃、全国の高校をまわっていたのだった。当時の努力が今、長い時を経てN高の信頼というかたちで実を結んだ。

授業プログラム開発秘話

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ネットの高校、はじめました。—新設通信制「N高」の教育革命

崎谷実穂

2016年4月、KADOKAWA・ドワンゴグループがインターネットを活用した新しい通信制高校「N高」を開設しました。2年目となる今年度の新入生は2002人。新設の通信制高校としては異例のスピードで生徒数が増えています。 なぜ出版社...もっと読む

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piropiro252555 https://t.co/s2VALPQWiD 約3年前 replyretweetfavorite

yaiask 後半は授業プログラムの話。参考書を出版している有名予備校教師とのコネクション、アプリ開発、授業の生中継など、すべてに角川とドワンゴが培ってきたノウハウが活かされています 約3年前 replyretweetfavorite