ドワンゴとKADOKAWAならではの課外授業
その他の課外授業としては、「プログラミング授業」がある。こちらも、N予備校アプリで聴講することができる。教えるのは、ドワンゴのトップエンジニア、吉村総一郎さんだ。現役のトップエンジニアが教えるだけあって、内容はとても実践的。講義を受ければ、ScalaやJavaScriptなどのプログラミング言語を用いて、ニコニコ動画の(ような)システムを一から作成できるようになるという。その他、スマホアプリ、ウェブサービスなどを作成するスキルも学べる。最初は、「ウェブブラウザをダウンロードしましょう」「ここに文字を入れてここをクリックしましょう」といったレベルから丁寧に教えてくれるので、プログラミングの知識がゼロであっても始めることができる。
プログラミング学習の落とし穴は、エラーが出たときにどこに原因があるかわからず、途方にくれてしまうことだ。原因探しに時間がかかり、諦めてしまう人も多い。だから、すぐに先生に質問できる環境があったほうが伸びる。双方向の生授業であれば不明点はすぐに質問し、先に進むことができる。教材も含め、新入社員に対するプログラミング教育で試行錯誤してきたドワンゴだからこそできる、プログラミング授業だ。
N予備校アプリでの授業の一部は、N高生以外も無料で視聴できる。プログラミング講義を受講している人は、社会人が多いそうだ。今後は、大学の教養課程で教わるような「コンピュータサイエンスコース」も準備しているという。
ネットで受けられる課外授業は、これだけではない。KADOKAWAの持つコンテンツ制作力を活かした、「文芸小説創作授業」、「ライトノベル(エンタメノベル)作家授業」、「コミック作家授業」、「イラストレーター授業」、「ゲームクリエイター授業」なども用意している。特徴は、小説家の森村誠一さん、『ソードアート・オンライン』などの作者川原礫さん、イラストレーター・いとうのいぢさんなど、各分野のトップクリエイターが講師を務めるということ。さらに、KADOKAWAの「小説野性時代」編集長やコミック雑誌の編集長など、現場で実際にプロのクリエイターを担当している人が入っており、編集者の視点も学べる。
こうした現役有名クリエイターが教える授業は、「講義」というよりは、自身の創作手法や体験について語る「講演」に近い形式になりがちだ。しかし本当にプロになりたい生徒にとってはそれでは不十分だということで、受講生は自分の作品を提出し、それを作家と編集者に添削してもらえるというコース内容になっている。
さらに、ドワンゴの子会社である、ファッションやデザイン、調理などの教育事業を長年手がけてきたバンタンによる、ファッション講座、ヘアメイク講座、パティシエ講座、デザイン(グラフィック・インテリア・イラスト)講座などもネットで受講できる。
キャラクターデザインのほか、デジタルツールの使い方も学べるイラストレーター授業。
現状、もっとも人気のあるプログラミング講義ですら、N高生の2割程度の受講率にとどまっており、まったく課外授業を受けていない生徒が半分以上いる。しかし、「高校卒業にまったく関係のない自主的な勉強を半数近くの生徒が挑戦してくれるだけでも上出来」(川上会長)とのことだ。こうした課外授業はN高生以外の社会人にもニーズがありそうなものが多いので、認知が広まれば受講数もさらに増えていくと考えられる。