N高はどんな授業をしているのか?
では、N高の授業を詳しく見ていこう。単位を取得するための通常授業は、PCやスマートフォンで映像学習をおこなう。教材は、教科書業界の大手・東京書籍が制作したインターネット講座だ。自分の好きな時間に視聴し、確認テストを受け、その内容をもとに問題形式のレポートを提出する。受講も提出もネットで完結するので、登校する必要はない。
レポートの提出期限は毎月25日に設定されていて、取材をさせてもらったN高生および保護者からも、月末はレポートに追われているという声が聞かれた。自宅学習の場合は特に勉強時間が決められているわけではないが、この締め切りがあるから強制力が働いているのだろう。
授業の受講やレポート提出の進捗は、専用サイトのマイページで確認ができる。またN高は生徒一人ひとりに担任教員がつくため、レポートが提出されていない場合は担任からフォローが入る。レポートが無事提出された際にも、本人と保護者に電話やSNSで連絡が入るのだ。ここまでされれば、勉強せざるを得ない。
実際、N高のレポート提出率は92・6%にのぼっており、これは通信制高校としては数値が高いといえる。ただ、プロのベーシストとして活躍しているN高第1期生のとある生徒は、それでもレポート提出が滞ってしまうとのことだった。社会人として仕事と勉学を両立している場合は、時間をとるのがやはり難しいのかもしれない。こうした特徴ある生徒が集まっているのもN高のおもしろさであるが、そうした生徒の紹介は第2章でおこなう。
と、ここまでの単位修得のための授業は、正直に言って工夫のしどころがないのだそうだ。学習指導要領で学年ごとの学習単元、目標、どういう内容を扱うかなどは細かく決められており、高校卒業資格のとれる学校として認可を受けるには「映像授業は早送りしないで観るようになっているか」などの指導が入る。N高のそもそもの発案者の志倉千代丸さんは当初、自社のリソースを活いかし、アニメーションをふんだんに取り入れ、有名声優を使った「いい声」の授業映像を制作するといったことを考えていたという。しかしそれらのアイデアは、学習指導要領の壁の前に実現が不可能だということがわかった。
通常授業がダメでも、課外授業ならいいのでは?ということで、「ネットの高校」、そしてIT&コンテンツ企業のカドカワとしての本領は、課外授業によって発揮されることとなった。
まずは、「大学受験対策授業」。オリジナル教材には、KADOKAWAグループである、学習参考書の出版社として約30年の歴史を持つ中経出版のノウハウが詰め込まれている。そしてすごいのは講師陣だ。自分の名前で参考書を出している一流講師を、教科ごとにN高の授業のために引き抜いてきたというのだ。
N高の生授業の配信風景
さらに、これら講師の授業を視聴できるアプリ「N予備校」をドワンゴで独自開発している。このアプリが画期的であり、まさに「ニコニコ生放送」と教育の融合が実現されていて、実際に使ってみると感動ものであった。
ここで改めて「ニコニコ生放送」および「ニコニコ動画」について説明すると、これらはドワンゴが提供している動画サービスだ。2016年12月末時点で、会員登録者数が約6210万人、有料会員が約252万人と日本最大級の規模を誇る。画面上にユーザーが入力したコメントを流すことができるのが特徴で、アニメやゲームと親和性が高く、初音ミクをはじめとするボーカロイド楽曲の発表の場となるなど、独自の文化を築いてきた。そこでユーザーを楽しませてきた機能が、N予備校アプリに存分に活かされているのだ。
アプリでN高の生授業を受講してみた
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