どんな人がN高に合っている?
「どんな人がN高に合っているのか」と聞くと、多かった答えが「目的意識のある人」だった。とある女子学生は、「N高で夢を見つけるんじゃなくて、もともと夢を持っている人が入学して、それをかなえる礎をN高にいるあいだに築くのがいいんじゃないかなと思います」と答えた。
出川くんの父親は、N高進学を考えている子や、これから転校してくる子の保護者に、「N高ってどうですか?」と聞かれることがたまにあるという。そういうときは、「やりたいことがあって、自分でそれを追求していける子なら、いいと思いますよ」と答えるようにしているという。クラス全員で授業を受けるのとは違い、レポートの提出は自分でスケジュールを管理しなければいけない。人と同じことをするのに慣れている子であれば、全日制学校のカリキュラムに従って勉強したほうが楽なのだ。「お子さんとよく相談して、モチベーションの拠り所を確認してから決めたほうがいいと思います」(出川くん父)
担任教師の一人は、「普通の全日制高校よりも、表現力のある子が多い」と語る。普通の高校で学生に「なぜうちの学校に来たの?」と聞くと、「えー、校則厳しくないから」「家に近いから」という答えがよく返ってきていた。一方、N高の子に聞くと、「絵を描くのが好きで、それをやりたいから」「アニメが好きで、将来アニメの仕事に就きたいから」など、「自分の好きなものはこれ」「やりたいことはこれ」と目を輝かせて話してくれる子が多い。保護者もそれに理解を示し、やりたいことを優先したほうがいいと考える家庭だからN高を選ぶのだろう。
N高には「やってみたい仕事」につながる授業が数多く用意されている。
それはもしかすると、現状のスタンダードな考え方ではないかもしれない。
「協調性を身につけさせたい」「進学校に入れたい」と考える保護者のほうが多数派だと考えられる。ただ、その「協調性」や「学歴」が今後の社会で必須になるのかは、今のところわからない。出川くんに、「正直に言って、偏差値とか知名度が高い、いわゆる進学校に入っておけばよかったと思うことはある?」と聞くと、即座に「あんまりないです」という答えが返ってきた。「進学校に入って、いい大学に行ったところで、やりたい仕事に就けるかどうかわからないじゃないですか。プラス1くらいのアドバンテージを得るために入るなら、学歴以外のところを伸ばして大きな武器にしておいたほうが、選ばれる可能性は広がると思うんです」。
たしかに、英語ができて、プログラミングができれば、有名国立大を出たというだけの人よりも活躍の場は広いだろう。彼の場合はさらに、音楽という武器もある。こうした、明確な「やりたいこと」がある人にとっては、N高は最適な進学先になる。
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