少子高齢化の時代に、なぜ高校を?
2015年10月、カドカワ株式会社が「N高等学校」を翌年4月に開校するとして、詳細を発表した。カドカワは、2014年10月1日に、出版・メディア事業をメインとするKADOKAWAと、ニコニコ動画などのサービスで知られるIT企業ドワンゴが経営統合して設立された会社だ。経営統合の記者会見時には、角川歴彦会長が、ドワンゴの川上量生会長を高く評価し「ようやく私は、川上さんという若い経営者を手にしたんだと思う」と語ったことも話題を呼んだ。
そのカドカワがなぜ、高校をつくることにしたのか。KADOKAWAとドワンゴの事業内容においてシナジーが生み出せそうな新規事業である、という主張はわかる。現在、ITを活用して新時代に即した教育をおこなう“EdTech”の分野が注目を集めているのも知っている。それでも、少子高齢化が進む時代に高校をつくることは、果たして好手なのだろうか。
そう考えて「通信制高校」について調べてみると、興味深いことがわかった。全人口に占める若者の割合が年々減っている日本において、通信制高校では10代の生徒が増えているのだ。
2015年度の学校基本調査(文部科学省調べ)によると、通信制高校に通う生徒の総数は約18万人。15~17歳の割合は63・8%にのぼる。生徒全体の平均年齢は19歳で、公立では21歳と少し上がるが、私立ではまさに17歳が平均となる。公立の通信制高校では生徒数自体が減少しているが、2007年度から10代の生徒数だけが増加。2010年度にかけて、約3万人増えている。私立の通信制高校では2003年当時から10代の生徒が90%を超えており、2007年度には82260人、2010年度には90673人と、堅調に生徒数を増やしている。つまり、中学卒業後に通信制高校を選ぶ、もしくは全日制の高校を中退して通信制高校に通う生徒の増加ペースが、10代人口が減るスピードを上回っているのだ。
勤労学生のための学校が、不登校の子どもの受け皿に
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