(C)羽海野チカ/白泉社
あのときからだいぶ成長したぞと思って
—— とりあえず、マンガ以外で楽しいことも増えてはいるわけですよね。
羽海野 そうです。さすがに去年は忙しすぎたから、フィンランドに行ってるあいだだけ自由で。農家に泊めてもらって大きな黒ブタに吠えられて逃げ回ったりしてました。
—— 旅行以外で日常での楽しさっていうのはどうですか?
羽海野 いまは仕事ばっかりだな……。でも、アニメが始まったら新房(昭之)監督と脚本の打ち合わせとアフレコとかで、多いと週に二度みんなでご飯食べて。あと、白泉社さんでも原画展とかいろいろあるので、いろんな人と会ってて楽しかったですね。新房監督とご飯食べるのはとても楽しいので。おもしろい人だし、そこにいる人とも仲良くなったし、楽しいです。
—— アニメ化とかされるたびにちょっとずつ人間関係が広がっていって。
羽海野 はい、新房さんというおもしろい生きものを見つけて。どこまで焼酎が入るんだろうとか(笑)。あと白泉社の偉い人と新房さんがとても仲良くなって、ふたりが目で語り合ってるのを見てワーッと思ってます。いろんな人を見てるだけでも楽しいですね。
—— じつは今日、取材が2本目なわけですけど、『FRaU』の編集者からのメールで衝撃を受けましたよ。「羽海野さんは吉田豪さんじゃないとインタビューを受けないという話があります」みたいな。
羽海野 私、『ハチクロ』のときにカウンセリングをしてもらったけど、まだ『ライオン』ではカウンセリングしてもらってないので、成長した私を見てもらいたいと思って。でもあのときからだいぶ成長したぞと思って『CONTINUE SPECIAL』の原稿を読み直してたんですけど、変わってないところが多いぞ……とも思って。でも、旅行は向こうに友達を見つけるという荒業で乗り越えたので、だいぶいいぞと思って。
—— 変化は旅行がちゃんとできたぐらいじゃないですか(笑)。
羽海野 ですよね……。「なんで誘ってくれなかったの?」とかもまだ言えてないですが……。でも、まあいいかなって、忙しいから。
それがたぶん自信ってヤツ
羽海野 あと一番仲良かった女の子に子どもが生まれて、自由に会えなくなっちゃったので。
—— 大人になるとそれが大きいですよね。
羽海野 そうですね、女子はそこで。子どもが中学生ぐらいになるまでは自分たちが中心の旅行は叶わなくなっちゃうので。朝までファミレスでしゃべったりもできないし。だから、やっとできた親友を失い、ちょっぴりさびしいけれど「おばあちゃんになったら一緒に旅行しようね」って言ってます。前のカウンセリングのときぐらいに知り合った編集さんの女の子で一回り下なんですけど。出会ったころは週に何日も彼女と私の家で遊んで、朝までファミレスでおしゃべりしたりして。
—— 遅れてきた青春を味わっていたけれど。
羽海野 遅れてきた青春をそこでベッタリ過ごしていたんですけど。で、お嫁に行って子どもが生まれたら会えなくなって。初めての親友ロスにかかって苦しいですが頑張ります。
—— 改めて「私にはマンガしかない」と。
羽海野 彼女を失ったいま、マンガしかない(笑)。
—— 友達ができたことによって考え方とか変わりました?
羽海野 友達ができたことによって仲間外れが気にならなくなりました。前はどこの輪にも入ってないといけないのかなと思ってたんですけど、誰が誰と遊んで仲良くしてても気にならなくなった。それがたぶん自信ってヤツかもしれないと思って。自信がないと、どこかでみんなが集まって、これから私を仲間外れにする算段をしてるかもと思ってすごいつらかったんですけど。
—— なかなかそんな算段しないですよ!
羽海野 声かけてもらえないと怖かったんですが、いまは友達って私より圧倒的に年下の人たちばっかりなので、みんなで何してても、それは合う人と遊んでればいいんで。もう体力も追いつかないので。それが全然気にならなくなったのは、たぶんこれは自信ってヤツかもしれないってつい先週ぐらいに思いました(笑)。
—— 先週ようやく自信がついてきたかもしれないと思った(笑)。
羽海野 「これか!」ってなって。余計なことが気にならず、「え、どこ行くの? 私も連れてって」ってもう言わなくても良くなって。なんと楽なんだろうと思いました。10年の時を経て自信の片鱗がちょっと見え始めました。
ゆっくり変わって、ちょっとずつ強くなる
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