錬金

人生は理屈じゃない

オッサンこと堀井健史が改ざんした歴史を、元に戻すために俺は永遠の時間旅行に出る。愛する由里子とも二度と会うことはないだろう。身支度を整えた俺が向かった先は福岡県八女市。オッサンが生まれ育った故郷だ。ここからすべてははじまった。そのすべてをここで終わらせる。岩戸山古墳にたたずんだ俺はLINEのビデオ通話でオッサンを呼び出した。最後のご挨拶だ。
ホリエモンが贈る、感動のタイムスリップ青春小説!話題沸騰の書籍『錬金』を特別掲載いたします。

人生は理屈じゃない

 俺はLINEのビデオ通話で、オッサンをコールした。

 オッサンは1コールで出た。俺から連絡があるのを、気づいていたのだろう。

 画面に、オッサンの顔が表示された。

 白髪だらけで、痩せた顔。しかし以前のような疲れた表情ではなく、どこかさっぱりとした顔だった。

 おそらく彼は、俺のやろうとしていることを、見通しているのだ。

「よお、オッサン」

「やあ。君はいま、どこだい?」

「あんたの故郷だよ」

 と言って、俺はスマホのカメラを石人に向けた。オッサンが言う。

「岩戸山古墳か。なるほど考えたな。僕の故郷から時間旅行に出て、歴史を変える起点を消し、タイムスリップの追っ手をシャットアウトする。理路としては、たぶんうまくいきそうだ」

「現代の見納めの景色としても、ここは悪くないぜ」

 俺は古墳の森を眺めた。あの地面の下に、伝説の北九州の豪族が眠っている。

「ちょっと調べたんだ。ここに埋葬されている筑紫君磐井は、『日本書紀』ではヤマト王権に反乱を起こした、極悪のテロリストみたいに記録されている。でも近年の研究では、ヤマト王権の横暴に耐えられず、自治政治を求めて、王権に戦いを挑んだ反骨の名君だった説が、明らかになってる。そして磐井は、当時から高度な航海技術を持っていた。朝鮮半島の新羅など、諸外国と交易をしていた。

 でかい権力にケンカを売り、いち早くグローバルに打って出た。何か、あんたの生き方に重なってるような気がしたよ」

 オッサンは、嬉しいとも寂しいとも言えない、複雑な笑みを浮かべた。

「僕は反乱を起こすようなバカじゃないけどね」

「そう、バカじゃない。だから自由になれないんだぜ」

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堀江貴文
徳間書店
2017-02-21

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錬金

堀江貴文

PC市場で世界の頂点に君臨しつつあった日本は、あと一歩のところでなぜアメリカに後れを取ったのか? IT革命前夜、世界を変えた常識破りのカリスマたちの痛快な、失敗と成功――。その全真相をノベライズ。 「心が自由になれば、金も権力も...もっと読む

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yuko88551 〔コラム〕 2年弱前 replyretweetfavorite

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