ここは、東京西新宿。医療器具メーカー・ドブ板メディカル株式会社では、
馬路出(マジデ)課長「ちょっと、屑谷、今いいか?」
屑谷(クズタニ)先輩「あ、はい」
8年目の中堅社員、屑谷先輩が課長に会議室に呼び出されていました。
屑谷先輩「なんっすか」
馬路出課長「実はな、主任の福田が辞めることになってな」
屑谷先輩「えっ」
屑谷先輩は驚きました。主任なんていたの!?と驚かれる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです、実はドブメディ営業企画部には主任がいたんです。
屑谷先輩「急ですね」
馬路出課長「ああ、それで後任なんだが……お前に任せたいと思っている」
屑谷先輩「えっ」
これまた屑谷先輩は驚きの声を上げました。
馬路出課長「お前ももう30だろ? 役職に就くべきだって」
屑谷先輩「はぁ……それで給料は上がるんですか?」
馬路出課長「……」
すっと馬路出課長は目をそらしました。
屑谷先輩「……えっ、なんで目をそらすんですか。教えてくださいよ、給料は上がるんですか」
馬路出「……ほら、このご時世だろ? うん、お前の気持ちはわかるよ。でもな仕事にはもっとこう……金よりも大切なものがあるだろう……」
屑谷先輩「つまりは役職ついて、責任も増えるのに、給料は上がらない……だ、と……?」
馬路出課長「……」
またもや、すっと馬路出課長は目をそらしました。
屑谷先輩「目をそらさないで答えてくださいよ……!」
屑谷先輩の叫び声が、会議室に響きわたったのでした……。
ところ変わって、ここは六本木。
超一流外資系コンサルティングファーム・バッキンゼーで働く美女コンサルタント、藍田さんの姿がありました。
藍田さんはスーパーバリキャリではありますが、実は屑谷先輩とは幼馴染かつ彼女という、エロ漫画のような関係でした。
その藍田さんも、上司に会議室に呼び出されていました……。
MG(マネージングダイレクター)「急にごめんね。実は今度ミャンマーにオフィスを作ろうって話がグローバルであってさ」
調子のよさそうなMG(注:会社の超偉い人)がそう言いました。
藍田さん「ミャンマーですか」
MG「うん、ミャンマー今めっちゃ伸びてるじゃん? んで、藍田さん、ミャンマー行ってみない?」
藍田さん「はあ!?」
MG「今がチャンス! ミャンマーオフィス大きくなっちゃたら、藍田さん、支社長だよ! 支社長! どうこの若さで支社長!?」
藍田さん「し……ししゃちょう……!?」
その魅惑的な響きに、藍田さんはくらくらするのでした……。
屑谷先輩「ただいま~」
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