ネットを活用した新しい高校「N高」の秘密

2016年4月、KADOKAWA・ドワンゴグループがインターネットを活用した新しい通信制高校「N高」を開設しました。今年の4月時点での生徒数は約3,800人。新設の通信制高校としては異例のスピードで生徒数が増えています。
なぜ出版社であり、IT企業であるKADOKAWA・ドワンゴグループが高校をつくったのでしょうか?  既存の教育業界に一石を投じるN高が目指す教育革命とは? N高の秘密を解き明かした『ネットの高校、はじめました』の内容を、特別掲載いたします。

はじめに

N高等学校(N高)は、2016年 月に開校した、ドワンゴとKADOKAWAがつくった通信制高校だ。2015年頃、ドワンゴの川上量生会長を別件で 取材したときに、「高校を設立しようと考えている」と聞いて驚いた。ドワンゴといえば、「ニコニコ動画」を代表とするウェブサービスの会社というイメージが強かったからだ。

奇しくもそのころ、私は大分県にある立命館アジア太平洋大学(APU)という、生徒の約半数が留学生の国際大学のなりたちについて取材をし、1冊の本にまとめる仕事をしていた。前例がない斬新な学校を一からつくることのとてつもない苦労、そしてそこに生まれる感動をこの仕事で知った私は、N高のケースについても知りたくなった。

そうして、私は沖縄・伊計島にあるN高の本校を訪れた。校舎から数分歩いたところには、エメラルド色のビーチが広がっている。そこで、飛びきりの笑顔で体育の授業を楽しんでいる生徒の姿は、私の通信制高校へのイメージを一新させた。取材のなかでは表現力にあふれる個性豊かな生徒や、先進的な考えをもった保護者、時代に適した新しい教育をつくるという熱意をもった教員・職員たちの話を聞くことができた。どの年代の人も、インターネットによる社会の変化を柔軟に捉えていたのが印象的だった。


豊かな自然に囲まれた伊計島にある本校。校舎の周りにはサトウキビ畑が広がる。

社会全体が右肩上がりで、いい大学に入って有名企業に勤めれば安泰だった時代と違い、現代は変化が激しく、大企業でも経営不振や不祥事で破綻するリスクを抱えている。どんなことを学べばいいのか、どんな働き方をすればいいのか、 子どもたちはそれぞれに悩んでいる。高校生へのなりたい職業調査では、「公務員」が女子で1位、男子で2位という結果が出ていた。理由の多くは「安定しているから」。自分の未来に対し、期待よりも不安がふくらんでいるのだ。くわえて受験競争の低年齢化、不登校やひきこもりなどの問題も、解決の糸口が見えない。

今、教育のありかたを見直す時期にきているように思う。たとえば古くから続く、生徒を一ヶ所に集めて、一人の先生が指導をするという授業の仕組み一つとってもそうだ。これまでは、それがものを教えるのにもっとも効率的な方法だったのだろう。しかしネットが発達した今では、その方法だけではないことは明らかだ。

N高は、そんな課題のひとつひとつに向き合い、リアルの良さとネットの良さを最大限に活かして新しい教育のかたちをつくろうとしている。本書では、その過程をあますことなくお伝えしていく。

第1章は、N高の本校がある沖縄県・伊計島でのスクーリング(面接指導)のルポから始まる。どんな生徒が集まり、どんな雰囲気だったのかをお伝えした後は、N高の授業について解説していく。N高には、これまでにない新しいネット授業や、現役で活躍する小説家やイラストレーターに師事することができる課外授業など、オリジナルの授業がいろいろと用意されている。そして、N高ならではの「ネットで友達をつくる」ための仕掛けもある。


発表時に大きな反響を呼んだ「ネット遠足」

第2章では、N高の生徒、保護者、教員、職員などへの取材をもとに、「どんな生徒がいるのか」「ネットでちゃんと勉強できるのか」「生徒・教師間のコミュニケーションツールとして使われているSNSは荒れないのか」といった疑問に答えていく。SNSで仲良くなった友達に関東から北海道まで会いに行った女子生徒の話や、初めてネット上のホームルームを運営したベテラン教師の話など、さまざまなエピソードを詰めこんだ。この章を読めば、N高の実態がわかるだろう。


「slack」というSNSツールを使って行われるネット上のホームルーム

第3章は、N高の歴史である。N高は、どのようにして生まれたのか。一人の男が「学生のうちからさまざまな職業を知り、なりたいものになるための教育を受けられる学校があったらいいのに」と着想したところから、物語はスタートする。ドワンゴ、KADOKAWA上層部へのプレゼンテーションを経て、のちにN高の校長となる男の沖縄での奮闘、画期的な授業用アプリの開発、一流講師のスカウト......と、開校までの年半には、数え切れないほどのドラマがあった。

第4章では川上会長のインタビューをもとに、これからのN高がどうなっていくのかを読み解いていく。川上会長の社会を見渡す広い視座と、第5章に記した

立ち上げメンバーの「子どものために新しい教育のかたちをつくりたい」という熱い思いが交差するところに、N高の未来が見えてくる。

N高は広域通信制高校として、将来12万人規模の生徒数を目指している。日本で一番大規模な高校がN高になったとしたら、何が起こるのだろうか。学歴は意味をなさなくなり、高校生のうちからクリエイターやプロフェッショナルとして活躍する人材がたくさんでてくるかもしれない。授業はネットで受けるのがスタンダードになり、大人数の一斉授業が前時代的に見えるようになるかもしれない。N高は、未来の〝普通〞をつくろうとしているのだ。この教育革命の始まりを、本書で見届けてほしい。

ドワンゴ川上量生会長インタビュー
生徒数は2000人超。異例づくしのネット高校、開設!も公開中!


この連載について

ネットの高校、はじめました。—新設通信制「N高」の教育革命

崎谷実穂

2016年4月、KADOKAWA・ドワンゴグループがインターネットを活用した新しい通信制高校「N高」を開設しました。2年目となる今年度の新入生は2002人。新設の通信制高校としては異例のスピードで生徒数が増えています。 なぜ出版社...もっと読む

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コメント

consaba 崎谷実穂 「N高は、未来の〝普通〞をつくろうとしているのだ。」|| #life954 #radiko #tbsradio 10ヶ月前 replyretweetfavorite

RieDorji ライターの方が著書されているAPUにはブータンからの留学生もいて、私も注目しているんです。RT 2年以上前 replyretweetfavorite

RitaDavis00 N高本の中身を、一部cakesで連載しています! 今回はまえがき 2年以上前 replyretweetfavorite

no__a__na 将来12万人規模を目指している! 多数派になろうとしている。。 こうゆう高校が主流になったら、、嬉しいです。 N高がもっと知られるようになりますように。 https://t.co/ZGDbNpENTl 2年以上前 replyretweetfavorite