無駄なものは、持ちたくないし、捨てたくなる。いわゆる断捨離精神に満ちた一室で、大人気漫画『じみへん』(小学館)が生まれているわけだが。無駄が大好き! な「ケトル」としては、何だかちょっと、寂しい気持ち。
「本当に何も持たないんです」と話すのは、『もたない男』編集担当の美濃氏。「最近は作品のコピーを取らずに編集部に送っているそうです。どうせ紛失なんてしないことが分かったそうで。そういえば、一緒に競輪に行ったときは、投票用紙を1枚、メモ用にポケットに入れていましたね。メモにはその日の買い目がちょこっと書かれてあるだけ。あとは出馬表の新聞の切り抜きと、短いボールペンを1本。基本的に、出歩くときも何も持たないんです」
そんな断捨離精神は、文具にまで。たとえばボールペンは、インクが減っているのに本体は長いまま残るのが許せず、インクが減るごとに本体を削っていく。ポケットにさすクリップも
無駄だと感じ、削り取ってしまったこともあるそうだ。が、机上のボールペンが転がっていくのを見て、「ボールペンのクリップは、ポケットにさすためだけのものではないんだ」と気づいたらしい。また、消しゴムはケースが無駄らしく、外して使用している。もちろん、無駄なものをより省くため、消しカスがまとまるタイプを。
「『定規が長くてペンケースに入らないから折りました』と聞いたときは、笑いましたね」
とにかく無駄が嫌いな中崎氏。だが、前述のボールペンについては、減った部分を削ったら先と後ろを瞬間接着剤でくっつける、という非常に手間のかかる作業が伴っている。「無駄なものをなくすための無駄な作業」は全く厭わないというから不思議だ。断捨離精神と隣り合わせのその無駄なDIY精神を、雑誌「ケトル」は応援します。