勝つためには確率を重視するしかない

選手として監督として一流を極めた野村克也氏を支えたのは、みずから見出した野球理論を詳細に記したノートの存在でした。今日までこのノートを閲覧できたのは、息子・克則氏など一部の野球関係者のみ。長い歳月をかけて書き継がれた、その“門外不出の野球ノート”をついに完全初公開します。今回は「野球の本質論」第3回目(全4回)の公開です。
最初で最後の、究極の野球本『野村克也 野球論集成』を、発売に先駆け特別先行掲載いたします(4月21日発売)。

野球の要素④ 勝敗の7割以上をバッテリーが握る

 野球は、守りで0点に抑えれば負けない。点取りゲームである一方で、野球は「失点の防ぎあいゲーム」ともいえる。

 2015年にセ・リーグを制したヤクルトは翌16年、5位に沈んだ。強力な「矛」(セ・リーグ6球団中2位のチーム打率・256)を誇りながら、最弱の「盾」(セ、パ12球団最低の防御率4・7?3)しか持っていないせいで、リーグ連覇を逃した。

 人間には、楽をしたい本能がある。相手より多く点を取る攻撃重視の考えは、楽をして勝ちたいという願望の強い表れといえる。勝敗の鍵は、やはりバッテリーが握っているのである。

「プロスポーツの中で一番難しいのは、バッティングである」と言ったのは、大リーグの「最後の4割打者」テッド・ウィリアムズ(元レッドソックス)だった。

「できるなら、最初の一球は見送った方がいい。その一球で、相手の球のスピードや特徴がわかる。そうすれば、自分に対してどういう投球をしようとしているのかがわかる」

 ウィリアムズはこうも語り、第1打席の初球を捨てる不利を承知の上で、2球目以降に備えろと説く。いかに投手が有利か、わかるだろう。

 投手は最初にボールを握り、彼が投げて初めて野球は始まる。好きなフォームで、好きなコースへ、好きな球種を選んで投げられる。つまり、ストライクゾーンに向かって「攻めて」いけるのである。

 打者は必然的に受け身になる。自分自身のヒッティングゾーンよりも、はるかに広いストライクゾーンを「守る」。どんなコースに、どんな球種が来るかわからないまま、直径約7センチのバットの芯で捉えなければならない。どこまでも受け身の存在でしかない。

 7割は失敗しても「3割を打てば一流」という打撃の確率で、9人がかりで1人の投手を攻略しようとする。投手のバックには捕手を含む8人の野手がついて、守ってくれている。

 投手は「俺が投げなければ始まらない。打てるものなら打ってみろ」というプラス思考を失ってはならない。一方、投手をリードする捕手は、常に「どうすれば打たれないだろうか」と、マイナス思考で備えなければならない。投手はプラス、捕手はマイナス。だから「バッテリー(電池)」と呼ばれるのだと、私は思っている。

 捕手は常に、投手の状態、打者の対応、試合の状況を加味して、打たせない努力をする。投手は捕手の要求に応え、ボールに意思を込めて投げる。バッテリーは「打者より有利」「主導権を握っている」という事実をバネにして、全力で失点を防ぐ努力をすべきだ。

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野村克也

選手として監督として一流を極めた野村克也氏。その根底にあったのは現役時代から、みずから見出した野球理論を詳細に書きとめたノートの存在――。今日までこのノートを閲覧できたのは、息子・克則氏をはじめとする野球関係者のごく一部だった。長い歳...もっと読む

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ga_kun8 #SmartNews この連載を読むたびに 4ヶ月前 replyretweetfavorite