誰が建てたのか?新宿に「停泊中」の昭和の大建築【軍艦マンション】

数々の街歩き取材を重ねてきた、ライター兼編集者のフリート横田氏。2020年の大イベントを前に、東京の街が大きな変貌を遂げつつあることを肌で感じているといいます。その危機感から、今ならまだ間に合う“懐かしい東京の風景”を伝えるべく、書き下ろし新連載がスタート! 
初回は、新宿に鎮座する大建築「軍艦マンション」。昭和の勢いを感じる、存在感あふれるたたずまいと、その「狂気」と言われた建築家について。



第3スカイビル(※)。昭和45年竣工。鉄のマンションと当時言われたが、現在は〈軍艦マンション〉の通称で、建築好きには広く知られている。この姿を実現するために、オーナー・役所・施工者の説得に2年を要したという。※竣工時の名称

狂気の建築家。
かつてそう呼ばれた建築家がいる。

この第3スカイビル、通称〈軍艦マンション〉を設計した、建築家・渡邊洋治氏である。著書を見た限りでは、ご本人はその呼称を好んではいなかったにせよ、嫌ってもいなかったよう。

「それにしても、新聞や雑誌のとりあげる私への記事には,「奇」,「異」,「狂」などの形容詞がだいたい使われるようである。「侠気」なら私の好むところであるが,「狂気」とはいささか苦笑した。」(渡邊洋治『建築へのアプローチ』)

いやいや狂気などと、とんでもない! 建築音痴の筆者でも、この建物を一目見るだけで、まったくそんな人の手になるものじゃない、と言い切れる。

軍艦にあたる光とその翳(かげ)が、
無機質な鉄を妖艶な姿に変える。

まず、大戦艦の艦橋のようなビルてっぺんのペントハウスに目が行ってしまうのだが、その下に並ぶ、四角い箱のような住居ユニットも見てほしい。これが、大通り(職安通り)のほうに尻を向け、鷲が飛び立つ間際のごとく少しずつ広がりながらせり出し、また大空に向かって段々状にせりあがっていきながら、躯体に取り付けられている。採光のためにこんなふうにしてあるのだけれど、全体の姿がもう、ものすごく流麗。
 さらに、屋上の真ん中あたりに、ゆるやかな窪みをつけてあり、全体のシルエットが、見る角度や、光と翳の具合によっては、なにか龍のような生き物が身をよじらせているようにも見える。この水平、垂直方向への曲線の流れ、うねりが、もう絶妙。武骨で重量感のある鉄の外観でありながら、刀の反りを目にしたときのような、しなやかな印象を加えているのである。

どうです、グッときませんか?

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この連載について

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東京ノスタルジック百景 シーズン2 ~今見ておきたい昭和の風景

フリート横田

ライター兼編集者として、数々の街歩き取材を重ねてきたフリート横田氏。著書『東京ノスタルジック百景』からのcakes連載が好評を博し、満を持して書き下ろしの連載がスタート。2020年の大イベントを控え、急激に変化しつつある東京。まだわず...もっと読む

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コメント

ochinchinbiron @masa_photo_jp 妖しい色に染まった軍艦が見てみたいですッッッ!!! https://t.co/ffjTTh8hss https://t.co/8497IgmDIq 7ヶ月前 replyretweetfavorite

TP_kusanagi 糸魚川善導寺を知らなかったよ! すごい建築家だなあ〜 8ヶ月前 replyretweetfavorite

evmono00 #スマートニュース 惚れ惚れする 8ヶ月前 replyretweetfavorite

shibuyareina 気になってた 8ヶ月前 replyretweetfavorite