女がいないほうが「男同士がうまくいく」のは、現代も同じ!?
房野史典さん(以下、房野) 黒澤さんの『なぜ闘う男は少年が好きなのか』、読ませていただきましたが……すっごいインパクトでした!
黒澤はゆまさん(以下、黒澤) ありがとうございます。
房野 僕も『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳・戦国時代』という本を出していて、戦国時代の男色については少し知っていたんですけど、日本だけでなく、古代ギリシャからローマ、中国……と、全世界で行われていたのか!と驚きました。
黒澤 強い男ほど、男色を好む傾向は強かったようですね。そのため、男色が全人類共通の普遍的な文化だったというスタンスで、このコラムを始めました。古今東西、あらゆる男色を調べていくと、ゴリラの話にまで突き当たって……。
房野 そうそう、ゴリラの話(笑)! 僕、あのコラムは結構笑いました。
黒澤 ある大学教授が観察したところによると、家族しか作らないゴリラが、例外的に6匹で集団を作って、それが何年も仲良く続いた。オス5匹、メス1匹だと思っていたら、実は6匹とも全部オスだったという話ですよね。
房野 いや~、そこ、現代でも共通ですよね。女性が入っていない男性の団体のほうが長続きするという(笑)
黒澤 分かります。男子校のほうが安定するみたいな(笑)
房野 男女のあれこれが入った途端に波乱を呼びますもんね。
黒澤 そういう波乱がない分、男同士だと結束が固くなる。房野さんがご著書で熱く語っておられた戦国時代、武将と家臣団を強く結びつけていたのは、男色から生まれた絆があってこそじゃないかと思います。
黒澤さんの話に聞き入る房野さん。
殿様との関係を自慢する家臣たち
房野 武田信玄が美少年にラブレターを送った話は有名ですが、戦国時代で一番すごかった人は、誰なんですか。
黒澤 どうなんでしょう。こういうベッドのことって隠しておくものですから、真実は分かりませんよね。ただ、伊達政宗だけは、その記録が残りまくっています(笑)相手との誓いで腕を斬ったり、股を突いたりと、体中傷だらけだったそうです。
房野 大阪夏の陣のときの、伊達政宗と家臣・片倉重長のエピソードには、一番笑いました。政宗が、「ぜひ僕を先鋒にしてください」とお願いしてきた重長を抱き寄せてキスして、「おまえ以外、誰を先鋒にするというのか。するに決まってるじゃないか」と(笑)
黒澤 このエピソードは、片倉家代々の記録『片倉代々記』に書かれているんですが、これはやっぱりもう片倉家としては自慢したいんですよね。殿様にキスされたんだぞ、すごいだろうって(笑)
房野 そういえば、織田信長が家臣を集めて、ひとりずつ手柄を褒め称えていった中で、前田利家に対しては「おまえが、ちっちゃい頃、本当によく抱いたな」と言って、みんなそれを羨ましがったというエピソードもありますよね。
黒澤 それも前田家の言行録『亜相公御夜話』に、しっかり自慢げに書かれています。
房野 栄光なんですよね。全部、そんなニュアンスで書かれてんだな。
黒澤 信憑性が高いと言われる『甲陽軍鑑』には、今年の大河ドラマ『おんな城主・直虎』に登場する井伊直政も、徳川家康と関係があったんじゃないかと書かれています。
房野 徳川四天王の中でも、直政は一番若いですもんね。
黒澤 これだけの名将たちが男色を体験していたということは——なかには犯罪スレスレみたいなこともあったりしたでしょうけど——やっぱり、単にセクシュアルな面だけでなくて、お互いを尊敬し合える仲だったのだと思います。
房野 強い軍団を作るために必要なことだと思うと、めっちゃ納得いきました。そういう関係があると裏切らないというか。
黒澤 世界史の話になりますけど、マケドニアのアレクサンドロス大王は、男同士の愛人でペアを組ませて、250組の重装歩兵の軍隊を作ったんですけど、これは本当にもう強かったらしい。
房野 重装歩兵の愛人(笑)
黒澤 隣のパートナーを楯で守るためには、自分は絶対逃げたらいけない。
房野 確かに僕も、好きなやつじゃないとそこまでやらない(笑) 友情とか信頼とかが強くなったら、いきつく気がするもんな。
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