第6章 想定外
2017
2017年に戻って、1週間ほど経った。
俺はニュースやネットの情報をむさぼるように読み、「現代」に何が起きていたのか、詳しく把握した。
得た情報をもとに数日間、必死に考えた。
そして、俺や由里子の背反をさらに凌駕する、オッサンが仕掛けた精巧な計画のすべてを理解することができたのだ。
オッサンは俺を、マンダリン・カールトンホテルのラウンジに呼び出した。
経済界の若きトップとして、アジア最高レベルのラグジュアリーホテルに、ほとんど住んでいる状態だという。
オッサンは広いテーブル席に、先に座って待っていた。
「お疲れさま、優作」
「別に疲れてないっすよ」
と言って、オッサンの前にどっかりと座った。
オッサンのすぐ横には、うつむき加減の由里子が小さくなって座っていた。
俺は最初、兄妹グルで俺を騙したのだと思っていた。
しかし今回の計画は、由里子に確認すると、オッサンの単独のものだったという。由里子もある意味で、オッサンに利用された立場だったのだ。
由里子が不安げに、先に口を開いた。
「優作、私……」
俺は手で遮った。