複雑な問題を伝える時こそ「等身大ストーリー」の蓄積が生きる—vol.2

3月発売の新刊『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』(英治出版)の著者である、世界的に影響力の大きい国際ジャーナリストのヨリス・ライエンダイクさんと、『龍馬伝』『るろうに剣心』シリーズ、現在公開中の『3月のライオン』、そして以前金融を取り上げた作品『ハゲタカ』も手掛けた映画監督の大友啓史さんの対談が実現しました!一緒にゼロから学ぶジャーナリズム、文化人類学的アプローチで対象をリアルに描くなど、誤解されがちな金融街で働く人々の本質に迫る作品を世に送り出した2人の対談を5回にわたってお送りします。

みんな、「自分の人生ストーリー」を誰かに聞いてもらいたい

大友 僕は『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』を読んで、よくこれだけ多くの金融マンたちが正直に話してくれたなと驚きました。

ヨリス 合計で200人以上ですから、実に多くの方に話を伺うことができました。

大友 彼らはもともと外部の人に対して話したいことがあったんでしょうか?同じ金融業界の人同士で意見を共有するだけでは満足できなくて。ヨリスさんに金融業界のことをここまで話してくれた彼らのモチベーションは何だと思いますか?

ヨリス やはり、みんな喋りたいんだと思います。人は誰でもみんな、自分の人生ストーリーを持っていますよね。そして、それを「誰かに聞いてもらいたい」という思いが根っこの部分にあるんだと思います。

大友 なるほど。そもそも、人はみんなそれぞれのストーリーを持っていて、それを伝えたい。

ヨリス そうです。今回のインタビュー内容は、英メディア「ガーディアン」のウェブサイトに載せているんです。掲載された記事を見れば、「自分もこういう内容でインタビューされるのか」とわかるので、「自分だったらどう答えるか」を想像しやすくなりますよね。

大友 たしかに、すでに掲載されていると答えやすそうですね。

ヨリス 記事を読んだ金融業界の人が「僕もインタビューを受けたい」と向こうからメールを送ってきてくれるんですよ。

ヨリス・ライエンダイク

大友 自分からインタビューを希望してくるんですね。

ヨリス そうなんです。他の取材ではなかなか心を開いてくれなくて、最後にやっと本音を話してくれる人もいるんです。でも、今回の金融街への取材はこちらがお願いしなくても、自ら話してくれました。

大友 話を伺っていると、私の仕事と共通する部分もありますね。僕は、俳優に「泣いてください」と指示して泣く芝居をしてもらうのは、あまり良いやり方ではないと思っています。環境や脚本を整えて、自然に泣けるように仕向けていく。相手がそうせざるを得ない状況に持っていくのが、僕の理想の演出スタイルなんですね。

ヨリス なるほど。たしかにインタビューでも、相手が自然と話したくなる状況を用意するのが一番ですね。

大友 人には心の奥底で感情を発露したいと思う瞬間がやっぱりあると思うんです。この本も後半になればなるほど、一人ひとりの会話もどんどん長くなっていますよね。クライマックスに近づくにつれて、みんなが喋りたくてたまらないという熱量が高くなっていくのがわかる。

ヨリス インタビューを重ねていくと、どんどん人々がしゃべってくれるようになるんです。結果、クライマックスに向けて盛り上がるように熱量が増加していきました。

大友 とても面白い構成になっていますよね。理屈やメッセージ性ではなく、まるでインタビューのプロセスを生の映像で見ているかのような面白い体験が得られました。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

「毎日、法に触れることを目にするよ」 「別にいいんだ。自分のカネじゃないし、ってね」…… "最も影響力のある国際ジャーナリスト"が ロンドンの金融街で働く200人以上にインタビュー。 一面的にしか語られてこなかった金融業界の 人間模様を描いた傑作ノンフィクション!

なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?

ヨリス ライエンダイク
英治出版
2017-03-14

この連載について

初回を読む
ジャーナリズムと物語の境界線を歩く/ヨリス・ライエンダイク×大友啓史

ヨリス・ライエンダイク

3月発売の新刊『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』(英治出版)の著者である、を新しく発売した世界的に影響力の大きい国際ジャーナリストのヨリス・ライエンダイクさんと、『ハゲタカ』『3月のライオン』等の作品を手がけた映画監督の大友啓...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント