(どうする? 出る?)
池崎からの電話だ。めったに電話をかけてくることのないあいつからの電話。これまで毎日のようにラインをしていたけれど、ここ2、3日はあいつはダム建設現場に視察だとか言って、連絡は滞りがちになっていた。電波が届かないところにいたらしい。
「……池崎ぃ」
プルルルプルルル……
どうする、いま起きてることを正直に話す? 池崎なら助けてくれる? いやでも……。池崎のコール音は続いている。
プルルルプルルル……
出る前に呼吸を整える。いまの心境のまま電話で懐かしい声を聞いてしまうと、泣き出しそうだ。池崎にそんな弱い私を見せるわけにはいかない。
よしっ! 普通に出よう。
そおっと、通話ボタンをスライドさせようとすると、パッと光が消えてホーム画面に戻った。池崎は諦めて切断したみたいだ。
「!!」
(おいっ〜池崎! 待って。いまのコール5回くらいじゃない? あいつ諦めるの早すぎでしょう)
さっきまで出ようかどうか迷っていたことはさて置き、ユウカは今度は迷いなく着信履歴からリダイヤルした。ガチャ。池崎はワンコールで出た。
「もしもし、ユウカだけど。池崎あんた電話切るの早すぎるでしょう! もうすこしトライしなさいよ」
「あ、ユウカさん。良かった。電話繋がってよかったです」
「…………それで、なんか用なの?」