椎名林檎の徹底した世界観
柴那典(以下、柴) ドラマ『カルテット』、いよいよ今日が最終回ですね。ドラマもすごくおもしろいんですけど、主題歌の『おとなの掟』が最高で。あれヤバくないですか?
大谷ノブ彦(以下、大谷) 半端ないですよね! ハマっちゃって何度も聴いちゃいました。
柴 曲は椎名林檎の書き下ろしなんですけれど、歌ってるのは出演してる松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平の4人で。彼らが劇中で組んでる弦楽四重奏団の名前が「カルテットドーナツホール」だから、この曲の名義も 「Doughnuts Hole」になってる。
大谷 完全にドラマありきの曲ですよね。
柴 しかも歌詞の言葉も、ドラマの主題を全部射抜いている。
大谷 「ああ白黒付けるのは恐ろしい」「自由を手にした僕らはグレー」「おとなは秘密を守る」……たしかに!
柴 『カルテット』っていうドラマには「白黒つけない」、つまり物事の裏表をはっきりさせないというテーマが潜んでるんですよ。4人には全員「裏」があるんです。言えないことがあったり、過去を隠していたりする。だけど、それが明らかになったときに「そんなこと、どうだっていいじゃないですか」って言うところがすごく感動的で。
大谷 わかる。そこグッとくるわ。
柴 それって、この4人がお互いのダメなところを認めあって、そこを好きあってる関係性だからこそ成り立つんですよね。真ん中に欠点がある。そういう結びつきであるということを「ドーナツの穴」というユニット名が象徴している。で、そういう風に白黒つけないのが大人だし、人生の豊かさであるってところまで、この楽曲は踏み込んでいる。
大谷 シビれるなあ!
柴 これぞ「主題歌」ですよね。
大谷 そもそも椎名林檎って、デビューした頃から自分の音楽をある種のプロジェクトとしてやってきた人ですよね。
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