皇室が国民と共に築く未来のために

昨年7月のNHKの報道、そした1ヶ月後の8月8日、ビデオメッセージとして放映された天皇陛下ご自身の言葉を読み解いてきたこの連載。現状の法整備ではできないとわかりながら、「譲位」を考えられたのは、自分自身よりも国民のことを考えてのことということがおわかりいただけたかと思います。最終回は、皇室の高齢化を省みながら、「譲位」が必須な理由と、「象徴天皇」のあり方を、いま一度確認します。

象徴天皇の務めが安定的に続いていくこと

 このように八月八日の「お言葉」は、「個人としての考え」を、ギリギリのところまで述べられ、最後に次のごとく語っておられます。

(8)始めにも述べましたように、憲法の下もと 、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。
 国民の理解を得られることを、切に願っています。

 ここに今上陛下の念願(切望)がハッキリ示されています。たしかに天皇は、現行憲法の第四条で「国政に関する権能を有しない」と制約されています。しかしながら、それをふまえた上で、2千年近い天皇(皇室)の歴史を振り返り、その望ましい在り方を考えて「これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえて国の未来を築いていけるよう」にすることこそ、最も大事な基本理念と認識しておられます。いわば〝君民一 体の国作り〞にほかなりません。

 しかも、そのためには、天皇陛下ご自身が「象徴としてその務め」(役割)を「常に途切れることなく」果たすことによって「安定的に続いていくこと」が必要です。だからこそ、高齢化による「身体の衰え」が進めば「全身全霊をもって象徴への務めを果たしていくことが難しくなる」と自覚され、それを受け継ぐことのできる皇嗣(皇太子)に「天皇としての全権と責任を譲らなければならない」と決意されたことが、よく判ります。

 これを裏返して、もう少し具体的に考えてみましょう。まことに畏れ多いことながら、もし83歳の今上陛下が、三笠宮崇仁親王のように100歳以上の長寿を保たれまして在位を続けられますと、現在56歳の皇太子殿下は、途中で「摂政」に就任されるとしても「天 皇の代行」にすぎません。

 そして皇太子殿下が、仮に80歳前後で皇位を継承され、もし20数年在位されますならば、その弟の秋篠宮殿下は100歳近くなって皇位を継がれることになりましょう。しかし、その長男の悠仁親王は、40数歳でようやく皇太子に立てられても、直ちに「摂政」を務めなければならない、というような事態になりかねません。

 これが超高齢化の進む21世紀に、天皇の終身在位制度を固守した場合に予想される姿だとすれば、今上陛下が体現してこられたような「象徴天皇としての務め」をつねに途切れることなく「安定的に続けていくこと」は、極めて難しいでありましょう。

 もちろん、現行法では、高齢化によりそれが出来なくなれば「摂政」に代行を委ねたらよいことになっています。しかし、前述のような大正天皇の例をみても、摂政を設置する決定も、それから崩御までの対応も、決して生易しいことではありません。

 そうであれば、万一に備えて、現行典範第四条の「天皇が崩じたとき」は残しておき、新たに「又は天皇が退いたとき」を付け加えて、「皇嗣が直ちに即位する」という二つの道を開いておくことが、将来のためにも必要だと思われます。

象徴天皇とは国民の総意に応えること 

 今回の「お言葉」では、初め(1)にも終り(8)にも、象徴としての立場を「現行の皇室制度に具体的に触れることは控え」「国政に関する権能は有しません」と、わざわざ断っておられます。それにも拘わらず、現行典範の原則にない「生前退位」(高齢譲位)の必要性を暗示するような「お言葉」を公表されたのは何故でしょうか。

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この連載について

初回を読む
象徴天皇「高齢譲位」の真相

所功

天皇陛下の「生前退位」を示唆する報道のあった昨年夏。8月には天皇陛下ご自身がお言葉を発表され、現在も「譲位」についての話し合いが行われています。この連載では、皇室問題のスペシャリストが、昨年夏の報道と、「天皇のお言葉」の真意を読み解き...もっと読む

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