昭和天皇の崩御について、今上陛下が考えられたこと

昨年7月のNHK報道より1ヶ月後の8月8日、天皇陛下ご自身のお言葉がビデオメッセージとして放映されました。現状の法整備ではできないとわかりながら、「譲位」を考えられたのは、昭和天皇の崩御に際し、並々ならぬお気持ちがあったためと思われます。今回も天皇陛下のお言葉を読み解きながら、なぜ「譲位」が必要なのか、改めて考えます。

昭和天皇の危篤から大喪儀の終了まで

 8月8日の「お言葉」は、今上陛下が「個人としての考え」を率直に話されましたが、まさか「天皇終焉」前後のことまで具体的に言及されるとは、まったく思いもしませんでした。それが次の部分です。

(7)天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。
 更に、これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重いもがりの行事がほぼ2ヶ月にわたって続き、その後、喪儀に関連する行事が、1年間続きます。
 その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が、同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。
 こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。

 これまた当事者である陛下ご自身の、辛い体験に基づく実感であり、また率直なご意向として、真摯に受けとめなければならないと思います。

 ここに指摘されている経緯は、壮年以上の方ならよくご存じのはずですが、若い人々のために、昭和から平成の初めにどんなことがあったかを、簡単に振り返っておきます。

 先帝の昭和天皇は、昭和62年(1987)4月29 日、満86歳の天皇誕生日祝宴で体調に異変を生じ、その9月に肝臓癌の手術を受けられ、いったん良くなられたかにみえました。しかし、1年後(87歳半)の9月19日、夜中に大量吐血して危篤状態に陥られ、それから111日後の翌64年(1989)1月7日朝、ついに崩御されてしまいました。

 その間、当時の皇太子殿下(今上陛下)は、妃殿下や3名の御子様と共に、東宮御所から皇居の吹上御所へ毎日お見舞いに参上され、法律に基づいて「国事行為の臨時代行」を委ねられ、象徴天皇としてのお務め代行に全力を注いでおられます。

 一方、昭和の戦前・戦中・戦後を共に歩んできた多くの国民は、天皇陛下の重い病状をテレビや新聞で知って憂いに沈みながら、何とか良くなられることを心から祈って、いろいろ晴れがましい行事などを自粛し続け、社会全体が重苦しい空気に包まれたのです。

 やがて新年早々の1月7日(土)午前6時半、皇太子・同妃両陛下はじめ皇族や身近な関係者に見守られるなか、静かに御息を引きとられますと、御遺骸は御所二階の病室から一階の御居間に移されました。

 それから僅か4時間後(10時半)、宮殿の松の間で「剣璽等承継の儀」を経て天皇となられた今上陛下は、親族の方々と共に、以後13日間( 19日まで)毎日、霊柩の前で拝訣(お別れの仮通夜)をされました。

 ついで1月19日、霊柩が御所から宮殿の松の間へ移され、ここを殯宮(もがりのみや)として、以後37日間(2月24日まで)天皇・皇族をはじめ各界代表者が、毎日かわるがわるお参りする殯宮祇候(本通夜)を行っておられます。

 さらに、2月24日(崩御から49日目)朝、霊柩が皇居の殯宮から新宿御苑の葬場殿へ移され、10時から「皇室行事」として神式による「葬場殿の儀」が行われまして、天皇陛下が「誄(るい)」(弔辞)を読まれ、皇后陛下から順々に拝礼されました。

 続いて正午から「国の儀式」として「大喪の礼」が行われまして、三権の長が弔辞を読み、内外の代表約1万人が拝礼しました。

 さらにその夕方4時すぎから、八王子の武蔵野墓地で霊柩が石槨に埋納され、夜7時半から「皇室行事」として「陵所の儀」が行われ、天皇陛下が御告文を読まれ、皇后陛下はじめ全皇族から三権の長および各界代表まで順々に拝礼しています。

 しかも、それから翌2年1月7日まで「諒闇」と称する服喪期間とされました。ただ、初めの50日と次の50日間は、厳正な喪に服すため外出などを遠慮されましたが、4月16日の百日祭以後は「心喪」となり、平常に近い形で公務に(国内へのお出かけも)励みながら、同年11月の即位礼と大嘗祭に向けて、さまざまな準備も進めておられます。

 そのように昭和天皇が危篤に陥られてから平成の大礼が終るまで2年2ヶ月近くにわたり、天皇・皇后両陛下をはじめ「残された家族」が「非常に厳しい状況下に置かれ」たことは、私どもの想像以上であったと拝察されます。

  それゆえ、天皇陛下が今後は「こうした事態を避ける」ためにも、高齢を理由とする皇嗣(皇太子)への譲位を可能にしてほしい、と訴えておられるお気持を、政府も国民もよく理解して差し上げなければならないと思われます。

数年前に提起された火葬と陵の簡素化

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