忙しすぎる!? 「象徴天皇」の務めとは

昨年の7月より1ヶ月後の8月8日、天皇陛下ご自身のお言葉がビデオメッセージとして放映されました。高齢を理由とした「譲位」とされながら、今も全国各地、海外まで足を伸ばされ、行為に励れておられます。2009年、75歳を迎えた天皇陛下に、宮内庁は行為の軽減を考えるようになりましが、実現されているとは言い難い状況です。今回も天皇陛下のお言葉を読み解きながら、「象徴天皇」とは何かを改めて考えます。

昭和天皇のことを思う今上天皇

 陛下は平成26年(2014)12月のお誕生日記者会見で、その夏までに完成して捧呈された宮内庁編『昭和天皇実録』に関連して、父君の思い出を尋ねられ、「人のことを常に考えることと、人に言われたからするのではなく、自分で責任をもって事にあたるということは、昭和天皇から学んだ大きなことであった」と語っておられます。これを承けて、国民のことを常に考えられ、「象徴としての務め」を自らの責任で積極的に成し遂げて来られたものと思われます。

 しかし、それは率直に申せば、生身の人間として、いつまでも同じようにできるはずがありません。それゆえ、これまでは「全身全霊をもって象徴の務めを果たして」こられましたが、平成 15年(2003)と同24年(2012)に外科手術を受け、80歳代に入って「高齢による体力の低下を覚え」られるようになりましたので、今後どのように御身を処していくことが、ご自身のためよりも、国家・国民全体にとって、また「私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになった」と述べておられるのです。

 確かに調べてみますと、「象徴としての務め」は、平成に入ってから20年近い間に、段々と増えてきました。そのため、宮内庁は慎重に検討した結果、陛下がすでに75 歳の平成21年(2009)1月、「今後の御公務及び宮中祭祀の進め方」について公表しています。

 しかし、それにも拘わらず、同年12月、お誕生日を前に発表された「一年のご動静」をみますと、次のようなお務めがあげられております。

(イ)「国事行為として、ほぼ毎週二回のご執務を(宮殿表御所で)行われ、内閣よりの上奏書類八八三件にご署名及び押印をされました。その他、宮殿では、恒例の講書始の儀及び歌会始の儀にご臨席になり、親任式(内閣総理大臣一名)、認証官任命式(国務大臣以下七六名)、(来日大使)信任状捧呈式(二四名)、勲章親授式(大綬章・文化勲章)及び勲章受章者の拝謁(春と秋に各七〜八日間)など多くの儀式や行事に臨まれました。また、総理大臣ほかの内奏や……日銀総裁などのご進講も受けられました。」

(ロ)「また、皇后陛下とご一緒に、各界優績者の拝謁のほか、(国内要人の)午餐や茶会など、多くの行事に臨まれました。四月十日のご結婚記念日(金婚式)には……本年中に結婚五十年を迎える夫妻約百組をお招きになり、共にお祝いになりました。」

(ハ)「外国からは、五月にシンガポール国大統領夫妻が国賓として来日し……宮中晩餐会を催されました。また公式実務訪問賓客(五組)のために宮殿で午餐を催されたほか、(中略、五ヶ国の元首ご引見)ヨルダン国王陛下、アメリカ合衆国大統領は、御所でのご昼餐にお招きになりました。(中略、五ヶ国の首相と三ヶ国の国会議長および、ベトナム国書記長・中国副主席のご引見)新任の外国大使夫妻を招かれてのお茶、日本滞在が三年を超える外国大使夫妻のための午餐、離任する外国大使夫妻のご引見は、例年どおり(平均ほぼ毎週)行われました。」

(ニ)「御所では、両陛下(お揃い)で、日本学士院会員・日本芸術院会員……青年海外協力隊及びシニア海外ボランティア帰国隊員、国際交流基金受章者などとお会いになったほか、定例の外務省総合外交政策局長によるご進講や、各種行事に関するご説明が、合わせて四十六回ありました。そのほか、勤労奉仕団、賢所奉仕団や新嘗祭のための(全都道府県から米と粟)献穀者に対し、五十六回のご会釈がありました。」

(ホ)「都内でのお出ましとしては、陛下は国会開会式に臨まれ、また両陛下にて全国戦没者追悼式を始め、毎年ご臨席になっている日本国際賞・国際生物学賞・日本芸術院賞・日本学士院賞などの授賞式のほか、今年も数多く行われた各種周年記念式典などへのご臨席がありました。十一月十二日には、天皇陛下御在位二十年記念式典が国立劇場で行われ、お言葉を賜ったほか、夕刻には皇居前広場で国民祭典が行われ……約三万人の国民の祝意におこたえになりました。」

(ヘ)「今年の公的な地方行幸啓は、二府六県(名称省略)にわたりました。全国植樹祭(福井)・国民体育大会(新潟)全国豊かな海づくり大会(東京)などにご臨席になったほか、(その際)地方の文化・福祉・産業の事情をご視察になりました。……十一月にはご即位二十年に当り近畿地方の関係者を京都御所にお招きになり茶会を催され……この一年間に公的に地方行幸啓先へご訪問になった市町村数は十二市一町になります。」

(ト)「両陛下は、七月三日より十四日まで国賓としてカナダをご訪問になり、帰路アメリカ合衆国ハワイ州を訪れられ十七日にご帰国になりました。……ハワイでは両陛下のご結婚を祝して設立された「皇太子明仁親王奨学金財団」の五十周年記念晩餐会に臨まれ、約一六〇〇人の参加者と一時を過ごされました。」

(チ)「陛下は、……七月に東京海洋大学水産資料館にお出ましになり、陛下のこれまでの(ハゼに関する)ご研究を展示した企画展をご覧になりました。また日本魚類学会に……三年ぶりにご出席になり、多くの研究者と楽しい一時を過ごされました。」

(リ)「天皇陛下は例年のとおり、皇居内生物学研究所の田で、稲の種もみのお手播き、お田植え、お手刈り(各二百株)をなさいました。神嘗祭に際しては、お手植えになった根付きの稲を(伊勢)神宮にお供えになり、また新嘗祭には、お手刈りになった水稲及び粟の一部を神嘉殿の儀にお供えになりました。」

 以上のうち、(イ)は数多くが国事行為(一部は公的行為)であり、(リ)は宮中祭祀に関する行為の一端です。それだけでも相当大変だと思われますが、それより段トツに多いのが(ロ)〜(チ)のような、大部分が公的行為です。

 これらは一つ一つ重要な意味をもっていますから、「今後の御公務及び宮中祭祀の進め方」のような軽減方針が示された後でも、急に削除したり他の皇族に分担させることが難しい。従って、引き続き天皇陛下ご自身が(皇后陛下と共に)行ってこられたわけです。

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