横へ」のつながり/新しい時代のセーフティネット【第32回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。
移動生活の実践によって、人間関係もさまざまに広がったという佐々木さん。ご自身の経験から、これからの「つながり」について洞察を深めていきます。

「横へ」のつながり

 これまで3拠点生活について、移動の自由が楽しめるようになったこと、そしてびっくりするほど所有するモノが減ってきたことという変化のお話をしてきました。3つめの変化は、人間関係のネットワークが多層化してきたことです。

 思いかえすと、昭和のころまでは人間関係はかなり固定的でした。たとえば古い時代の農村だったら、村で生まれ、村で育ち、村ではたらいて、村で老後を送る。村から出ることはほとんどなく、きわめて限定された人間関係だったのです。

 近代化が進んで人々が農村を出て、都市に流れ込んでくるようになると、当初はさまざまな人たちが入り混じり、まるでバザール(市場)のような混沌がそこには生まれていたでしょう。日本でいえば、太平洋戦争が終わった後の焼け跡の時期がそうです。でも高度経済成長が起きると、混沌はおさまり、日本人の人間関係は企業社会に回収されていくようになります。

 昭和のころの典型的な会社員の人生。地方で生まれ、思春期を地元で送り、高校を卒業し、上京して大学に入る。大学を出て就職し、会社の独身寮に住み、社内恋愛し、社内結婚し、社宅に住み、週末には同僚や取引先とゴルフや野球をし、会社の信用組合からお金を借りて家を建てる。定年退職とともにそれなりの金額の退職金を受けとり、会社の厚生年金でのんびりと老後を送る。

 そのころの終身雇用制では、人間関係さえもが社内で完結していました。わたしも終身雇用の新聞社ではたらいていたので実感がありますが、ひんぱんに移動や転勤があるため、社外に人間関係がつくりにくく、結局は社内の人間とばかり交遊するようになってしまいます。

 しかし2000年代に入って会社の中だけで暮らすというありかたは難しくなりました。人は否が応でも、会社の外に人間関係をつくらなければならなくなったのです。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

bickey_tweet 2000年代に入って会社の中だけで暮らすというありかたは難しくなりました。人は否が応でも、会社の外に人間関係をつくらなければならなくなった。自分の居場所はひとつではない。 約3年前 replyretweetfavorite

nakany1021 たくさんのゆるやかな関係はセーフティネットになりますし、何より楽しいし面白いと思ってます。 約3年前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao 「つきあうと得がありそう」「この人は有名だから」という利害関係ではなく「つきあうと楽しそう」「いい人だから友人になりたい」というシンプルな気持ち良さが大切。 約3年前 replyretweetfavorite

tny_twtr 「界隈性のある」人間関係、家族。  約3年前 replyretweetfavorite