登山から学ぶ必要最小限の極意/少ない荷物で人生を旅する【第33回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。
身軽になれば、移動することが楽しくなる。登山の荷物を工夫することはその実践例といえます。佐々木さんの簡単でおいしい山レシピも登場。

登山から学ぶ必要最小限の極意

 抽象的なわかりにくい話になってきたところで、ちょっと休憩しましょうか。

 さきほど「最小限の道具で料理する」ということを書きました。この考えかたは、登山のときの食事に共通するものがあります。山を登るときに担げる重量は、自分の体力の範囲内だけ。余計な道具を持てば、その分肩はつらくなり、足の運びは重くなります。

 料理の道具は、直径20センチぐらいまでのサイズの薄く軽いフライパンと、コッヘル(鍋)。火力は、ブタンガスのカートリッジを装着してつかう超小型コンロ。ツールは小さなナイフだけ、まな板はぺらぺらの薄いプラスチック板。しかし、これだけでも意外といろんな料理ができます。

 ある夏の早朝、南アルプスの鳳凰三山に出かけました。

 東面の青木鉱泉にクルマを駐めて、ドンドコ沢に沿った急登をぐいぐい登っていきます。視界の利かない樹林、テントや寝袋、食糧などを詰め込んだザックは20キロ近くあってけっこう重く、背中と腰を痛めつけます。汗が滝のように流れ、3時間も歩くとお腹がしっかり空いてきて、力が入らなくなってきました。シャリバテ(エネルギー源の糖質が切れてバテること)です。


 大きな滝のそばを越えたあたりに座れる場所を見つけて、「暑いなあ!」と仲間と言い合いながら、ザックを下ろしました。コンロとコッヘルをとりだし、小分けしておいた米を入れて目分量で水を加え、蓋をして火をつけます。沸騰してきたらとろ火にして、だいたい8分ぐらい。火から下ろして地面に置き、そのまま蒸らしておきます。

 ひとくち大にして味噌漬けにし、ジップロックでぴっちり封をした豚肉を持ってきてあります。最近は弁当箱ぐらいの大きさのソフトタイプのクーラーボックスがあるので、こういう生ものも山に持ち上げられるようになりました。

 この豚肉を焼いてコンロで炙ったパンにはさんでも超旨いのですが、今日はどんぶりものをつくることにしています。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

micronrole キャンプに興味があるのはそれをしたいというよりは、物に埋もれた生活から見えづらくなった自分自身を知りたいのが大きい。 2年以上前 replyretweetfavorite

Wyoshi ブッシュクラフトの哲学だな。 2年以上前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao ウルトラライトハイキングという思想は実は人生にもつながっている。 2年以上前 replyretweetfavorite

m_s_y “モノを徹底的に減らしてミニマリズムを実践し、モノに囚われず、そして移動自由な生活を実現するというのは、まさにこの「人生は旅である」そのものです。”> 2年以上前 replyretweetfavorite