鹿野 護(映像作家 / アートディレクター)→小川洋子(小説家) Vol.3「なぜ喪失感を描くのですか?」

今回のインタビュアー鹿野 護さんは、ヴィジュアルデザインスタジオWOWに所属し、映像制作やインターフェースデザインを手がける傍ら、サイト「未来派図画工作」や展覧会などにおいて自らの作品を発表しているトップクリエイター。そんな彼がインタビューするのは、91年に『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、その後も『博士の愛した数式』をはじめ数々のヒット作を世に送り出し、昨年12年ぶりとなる書き下ろし長編小説『ことり』を発表した小川洋子さん。「映像」「言葉」「物語」「科学」などさまざまなキーワードが飛び出す刺激的な対話になりました。

なぜ喪失感を描くのですか?

Q.『ことり』は死で始まり、死で終わる物語で、色んなところに喪失感が詰め込まれていて、結構心が痛かったんです。読んでいるうちに色んなところにポツポツと穴を開けられ、それがずっと続いていくような読後感がありました。

小川:これまでの人生を振り返ってみると、おそらく二度と会えない人の数の方が圧倒的に多いと思うんですね。本来ならば、「あの人にもう二度と会えない」という心の穴がもっとブスブス開いてもいいはずなのに、通り過ぎてなかったことのようにしている。小説というのはどんなものにも、その穴をよみがえらせる作用があるんだと思います。



Q
.僕も日常から「これが最後なんだ」と感じることがよくあります。特に子供が生まれてからは、最後の連続みたいな感じで、日々ブスブスと穴が開いていくんです(笑)。まわりの人たちにはよく「そんな風に考えない方がいいよ」って言われるのですが。

小川:寂しいから知らないふりをして取り繕っているわけですからね。人間には、なんとも言えない寂しさや切なさ、孤独などマイナスとされている感情が常にベースにありますよね。そこに飛び石のように瞬間的な喜びや幸福があるけど、それが浮かんでいるのは、悲しみの湖なんですよね。でも、悲しみが深いほどその人生は深い気がするし、そこに線香花火のようなささやかな喜びや幸福感が一瞬あって、それはそんなに巨大である必要はない。『ことり』の小父さんの人生もまさにそういうものなんですよね。

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