移動の自由と楽しさ/モノが減ると自由度はあがる【第31回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第3章のテーマは「街で暮らす」。ゆるやかに外とつながる暮らし方から、これからの共同体の姿が見えてきます。実際に移動生活を体験すると、いかにモノにしばられて生活しているかわかってきます。

移動の自由と楽しさ

 さて、この3拠点生活でわたしが会得できたものはあったでしょうか。
 いくつかあります。

 まず第1に、移動の自由が楽しめるようになったこと。
 第2に、びっくりするほど所有するモノが減ってきたこと。
 第3に、人間関係のネットワークが多層化してきたこと。

 ひとつずつ説明しましょう。

 まず、移動の自由。前に書いたように、軽井沢は東京から新幹線で1時間あまりと比較的近いのですが、北陸の西端にある福井は、非常に遠い。東京・羽田から1時間飛び、石川の小松空港。そこからさらにクルマで1時間半ぐらいかかります。電車で行こうとすると、東海道新幹線の米原から北陸本線に乗り換えて、鯖江で下車。さらにタクシーで30分。片道の移動でざっと半日はつぶれる感じです。

 越前陶芸村は、冬はたいへん雪の多いところです。拠点にしている家には床暖房もなく非常に寒いので、冬季はあきらめて春から秋までの滞在と決めました。クルマがなければなにひとつできない土地なので、軽井沢でつかっている軽自動車を春に福井に移動させ、秋の終わりにふたたび軽井沢に戻します。また妻の作品を運ぶことなどもあって、東京からクルマで移動することもあります。軽井沢からだと上信越道をたどって5時間。東京からは新東名高速道路を経由して、6時間。

 いずれにしても、かなりの体力がないと身体が持ちません。

 だから日常的に身体を鍛えています。ほぼ毎日、5キロのランニングを欠かさず、4日に一度はスポーツクラブのマシンで、筋力トレーニングを3セットずつ6種類。月に一度は登山に出かけ、時には20キロ以上の重荷を背負って山中を彷徨しています。ジャンクフードはいっさい口にせず、タンパク質を軸とした食生活を心がけています。

 ここまで徹底すると、身体はとても軽くなる。手の指の先から足の先まで、自分のコントロールが隅々にまでみなぎっているような身体感覚に変わっていきます。2日間で東京から福井を往復し、2日目の夜にはテレビ番組の収録に出るといったことをこなすこともありますが、それほど苦ではなくなりました。

 体力だけではありません。移動をスムーズにおこなうために、着替えや日用品、パソコン関係のいくつかの周辺機器はそれぞれの拠点に置いてあるので、移動のときの手荷物はごくわずかです。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

tutinoko310 モノを買ったり持ったりすると、重りのようにのしかかってくるイメージがある。持つものは少なく、移動しやすさを重視したい。 2年以上前 replyretweetfavorite

ayumikizuka なるほど! "道具で便利になったはずなのに、道具にとらわれてしまって不自由になる" https://t.co/P2DR7ECtEv 2年以上前 replyretweetfavorite

ukb0927 自分だったらそれぞれの拠点用に物を揃えるだろうな。 2年以上前 replyretweetfavorite

a_tocci ここまで徹底すると、身体はとても軽くなる。手の指の先から足の先まで、自分のコントロールが隅々にまでみなぎっているような身体感覚に変わっていきます。https://t.co/YAF7ue3Iw5 2年以上前 replyretweetfavorite