どこまでを『ドラえもん』と認めるか
まずは、あなたが見ている『ドラえもん』のペルソナ(外的側面/外部から見られているイメージ)は、別の誰かが見ているそれと必ずしも同じではない―という話からはじめよう。
あなたがガンダム好きなら、「どこまでをガンダムと認めるか」という議論に覚えがあるだろう。「『ZZ』まで」「ファーストのみ」「宇宙世紀のみ」「富野由悠季の直接監督作のみ」等々。これらの自分勝手な線引きには、各人各様の熱いガンダム観がほとばしっている。
同じように、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』好きなら、「バイオレンス劇画調だった初期のみ」「ホビー色が強かった40巻台まで」「麻里愛登場(67巻)まで」「擬宝珠纏登場(118巻)まで」となるし、『トムとジェリー』なら「ハンナ=バーベラ制作の第一期(1940〜58年)しか認めない」「MGM製作分はすべて認める」「MGM製作分のなかでもチャック・ジョーンズ制作の第三期(1963〜67年)だけは認めない」といった百家争鳴が繰り広げられる。
長期連載作品、長期シリーズ作品は、時期・作品シリーズによって作風が異なるため、「これぞガンダム」「これぞこち亀」「これぞトムジェリ」の認識が人によって異なる。これは無論、各人の嗜好性によるものだが、もうひとつ大きいのは世代の違いである。『こち亀』を1980年代に「週刊少年ジャンプ」で読んでいた世代と、ゼロ年代初頭にアニメ版で触れた世代では、「こち亀観」がまったく異なる。ファーストガンダム世代・オーバー40歳のガノタが『ガンダムSEED』(2002〜03年)以降しか知らない若手に「ガンダムってのはなあ」と説教するのは、至極当然というわけだ。
1969年から27年間連載され、作者逝去後も途切れることなくアニメ新作が供給され続けている『ドラえもん』も、「どこまでが『ドラえもん』か」議論の対象だ。「てんコミ収録分だけが真の『ドラえもん』」「てんコミ未収録話もアリ」「大山ドラしか認めない」「水田ドラも認める」「『ドラベース』もOK」といった具合に。……とまくしたてたが、なんのこっちゃと言うかたも多いと思うので、少し解説しよう。
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