外見が変わると、人生が変わる。
みなさんも実感された場面はありませんでしたか。 髪型を変えたらみんなが好意的になった、ヒゲを生やしたらモテ始めた、などなど。たかが外見、されど外見。見た目の印象が周囲におよぼす影響は、私たちが思う以上のインパクトがあります。 申し遅れました、私は山川アンクと申します。日本初の女性メンズ美容家として活動し、2013年には一般社団法人「日本メンズ美容協会」を創設。メンズ美容文化の普及と推進に日々取り組んでいます。
そんな私が常々、世の男性方に感じているのは「今のままではもったいない」ということ。「今」というのは、たとえば自分の体型に合っていないスーツを着ている、体臭に自覚がない、若者世代があたりまえに行っている洗顔や保湿をせずにケア不足に陥っている、といった現状のことです。たった数百円のデオドラントを使うこと、あるいは毎朝5分の洗顔を心がけることから「人生を変えられる」にも関わらず、あまりにも多くの男性が美容をないがしろにしている現実に、私はとても歯がゆさを感じているのです。
具体的なデータがあります。
これは労働経済学の権威であるテキサス大学のダニエル・S・ハーメッシュ教授が著書『美貌格差 生まれつき不平等の経済学』(東洋経済新報社)で明らかにした説ですが、人の生涯年収は容姿によって大きく左右されるそうです。 その傾向は男性ほど強く、容姿が並みに満たない人と並み以上の人の最大値を取ると、その差額は23万ドル(約2700万円)に。
これは、決して無視できない数字ですよね。
実は、経営者の方々は「見た目が業績に直結すること」を肌感覚で知っています。
経営者は企業の看板であり、その顔や身だしなみが自社のビジネス全般に波及することを自覚しています。 見た目に対する意識の有無によって、売上に7%の差が出るという統計データもあるほどです。 これは売上が億単位となれば、数百万円から数千万円の差が生まれることになるのです。
実業界の名経営者も、見た目の大切さについて言葉を残しています。
たとえば松下幸之助。氏はベストセラーとなった『松下幸之助 人生をひらく言葉』(PHP研究所)の中で、「心も大事、外見も大事」とページを割いて語っています。さらに稲盛和夫。氏も著書『働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」』(三笠書房)の中で、次のように語っています。 「立派な特性を備えているものは、見た目も美しいはずです。なぜなら、外見とは一番外側にある中身 のことなのです。見た目が美しいものは、必ずその特性も優れているに違いありません」、他にも「おしゃれは挑戦だ」が口癖だったと言われる本田宗一郎など、さまざまな偉人が見た目をよくすることの必要性を説いています。
実績十分の彼らが発した言葉には、素直に耳を傾けたいものです。
それにしても、なぜこれほどまでに見た目が重要なのでしょうか。
その答えは「メラビアンの法則」にあります。この法則によれば、人の印象は見た目で55%が決まります。 また、人が五感で得る情報のうち視覚が87%を占めるとも言われています。たとえば面と向かって、どんなにいい話をしたとしても、どんな容姿で言ったかによって相手に残せる印象が変わるということ。
にわかに信じがたいような、でもなんとなくわかる法則ですよね。
もうひとつ、「ハロー効果」もあります。
これはある心理現象を表す言葉なのですが、人は相手の目立つ部分に引きずられ、そのほかの部分も同等に評価してしまう傾向にあります。 1992年、ヘルシンキ大学である興味深い実験が行われました。 それは被験者がさまざまな選挙候補者の容姿を写真で評価した後、写真から受ける印象のみで政治家としての資質を評価するというもの。 結果、容姿が魅力的であるとされた人物ほど「信用性」や「好感度」「知性」が高評価につながることが明らかになりました。 つまり、見た目がいいと相手に信用されやすい。この事実を知っていれば、営業や商談の場面でも有利に事を進められそうですよね。
また、見た目や身だしなみについて、昨今は女性の意見も無視できなくなっています。
国が男女参画を働きかけ、決定権のある役職に女性を登用する企業も少しずつ増えてきました。彼女たちと円滑なコミュニケーションを取ること、そのために身だしなみを整えることは、仕事を進める上で、あるいは出世を図る上で最低限のラインとなりつつあります。 女性はよく「生理的にムリ」という言葉を口にしますが、これは脳の仕組みに理由があります。 というのも女性の脳は男性のそれにくらべて、感情をつかさどる部位と判断を下す部位が近い位置にあるのだとか。 彼女たちが抱く「生理的な嫌悪感」が重要な判断に影響をおよぼしがちであるということは、知っておいて損はないかもしれませんね。 そして、彼女たちの多くは何より幼い頃から衛生面を気にして、制汗スプレーを手放せなかった人たちです。 私自身、小学生の頃、体育の時間の後で汗をぬぐわない先生が「生理的にムリ」でしたから。
自分はもちろん、相手が清潔であるかどうかは女性にとって一大事なんですよね。
でも、もう大丈夫。私が「女性にも好感を持たれ」「仕事ができる見た目に変えて」「生涯年収アップにつなげる」方法を本書でつまびらかにしていきます。
どれも具体的なアドバイスですので、ぜひ最後までついてきてくださいね。