佐々木俊尚×影山知明トークイベントレポート【その3】

『そして、暮らしは共同体になる。』の発売記念として2016年12月14日に行われたトークイベントのレポートをお送りします。佐々木俊尚さんによる講演と、本イベントを主催・企画された「シェアする暮らしのポータルサイト」代表の影山知明さんとの対談の二部構成です。
第一部の講演のテーマは「住まい」。【その3】は、街が実際にどんな風に新しく作られつつあるのかをみていきます。

ところでさっきから、カフェやゲストハウスがやたらと多いですよね。これはなぜなのか。

みなさん、街の中心て何だと思います? 東京であれば駅ですよね。でも田舎だとどこだろう。僕は福井にも家を借りて住んでいてよく行くんですが、福井の中心はどこ? と聞かれると……福井県庁? でもなんにもないんですよ、福井県庁のまわり。権力の象徴みたいに威圧感のある建物ですが、だいたい昔の県庁ってお城の跡だったりするので周りにお店はなくて、公園や銀行や新聞社はあったりするけど、街としてあんまり楽しくない。じゃあ駅前が中心なのかというとどうだろう。駅ビルは立派です、新幹線がもうすぐ通るというのでね。ところが、ほとんど人が歩いてない。昼飯を食べるところさえない、県庁所在地なのに。いまだに地方の人は、駅を街の中心にしたいと思っているのだけど、もはや街の中心にはなりえないというのが現状なんです。じゃあ、街の中心は一体どこなのか?

旅行に行って楽しい街ってどんな街でしょうか。海外旅行していて、「ああ、ここ気持ちいい」ってどういうときに感じるかというと、ヨーロッパが典型なんですけど、「広場」なんですよね。そこに行くと街の中心という感じがあって、真ん中に噴水があったり、カフェがあってお茶を飲んでる人たちがいて、いつもいるおばあちゃんが今日も来ている。レストランがあったり、市役所みたいな事務手続きできるところがあったりとか、そういうのが立ち並んでる中心地がある。つまり、街の中心というのは、役所でもなければ駅でもなくて、人が集まる場所なんです。当たり前ですよね。だからこそさっきのように、新しい街を作ろうとすると、まずカフェをつくるんです。

I ターンの人がやっているこういう店がいま日本中あちこちに出来ていて、有名なのだと徳島県の神山町とか、隠岐島の海士町とか、熊野とか。コミュニティが10人、20人と増えてくると必ずカフェをつくる。集まる場所が欲しいんですね。その次には、友達が来たときに泊まる場所がいるからゲストハウスができて、次にできるのがなぜかパン屋(笑)。田舎には山崎パンしか売ってないから、ハード系のパン屋が欲しい、とパン屋ができる。そのうちクラフトビールのブリュワリーができたり……という風にだんだん街が広がっていく。

これってまさしく、ゼロから街を作っているんですよね。見かけ上シャッター街などの古い街があったりしても、シャッター街の構造がそのまま使われることはなく、場所をただ単に利用するというだけです。さっきみた遠野でも、街の中にカフェができると、もはや駅ではなくそのカフェを中心に人が集まる。そういう構図になってきている。これからはたぶん我々は、そうやって街を設計しなおして新しく作り、そこで気持ちのいい暮らしを営む、ということを全国規模でやっていなかきゃいけない。そういう場所がぽつんぽつんとあちこちにあって、それ以外は緑の廃墟という、そういう未来がいまや見えつつあるのかな、という感じがします。

本にも書いたんですけど、福井の敦賀の海岸沿いってとてもきれいなところなんです。こういう板塀の、昔の漁師さんの家がたくさんならんでいます。そのなかに「朱種(しゅしゅ」というリノベーションした家があって、そこに僕は一時泊まっていたんですが、このあたりすごく良いところなんですよ。ところが夜9時を過ぎて外に出てみると一軒も電気がついていない。ほとんど空き家になっている。こういうところに住んでいるのはもう後期高齢者ばかりなので、だんだん亡くなったり施設に入ったり、都会に住んでる子どもに呼び寄せられたりして、どんどん空き家化が進んでいる。これをなんとかしようと思って、こういうリノベーションの家をつくって移住体験とかやってるんです。ここの2階は広いフロアに電動式のスクリーンがついていて、周りに家がなんにも無いので大音量で映画が見れる(笑)。渋谷のアップリンクに行くよりずっと環境良いんじゃないかと思います。こういうのをつくってるけどやっぱりなかなか人は来ない。そこから歩いて3分くらいに綺麗な海水浴場があるんだけど、夏の海水浴の時期でもほとんど人がいない。いま地方にこういう移住体験施設いっぱいあるんですよ。なぜうまくいかないのか。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

sakamaru77 街の中心は必ずしも駅ではなく人が集まるところ。> 約3年前 replyretweetfavorite

SasakiTakahiro 新しい街を、人が減り、廃墟が広がりゆく日本の中に、少しずつ作っていく。 約3年前 replyretweetfavorite

t_hirayama0227 面白いなぁ。ヨーロッパの広場の件も。→「街の中心というのは、役所でもなければ駅でもなくて、人が集まる場所なんです。当たり前ですよね。だからこそさっきのように、新しい街を作ろうとすると、まずカフェをつくるんです。」 https://t.co/N72mll0SRy 約3年前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao 日本の地方都市の風景がつまらないのは、街の中心が空洞化した鉄道駅か市役所県庁だから。広場をつくろうというお話。 約3年前 replyretweetfavorite