佐々木俊尚×影山知明トークイベントレポート【その1】

『そして、暮らしは共同体になる。』の発売記念として2016年12月14日に行われたトークイベントのレポートをお送りします。佐々木俊尚さんによる講演と、本イベントを主催・企画された「シェアする暮らしのポータルサイト」代表の影山知明さんとの対談の二部構成です。
まずは第一部の講演録を全3回でお届けします。つづく第3章の内容を少し先取りするお話です。



今日は本を読んでいなくてもわかるお話をしようと思います。読んだ方はおわかりかと思いますが、内容が多岐に渡っていて、食の話から住まいの話、衣服の話やテクノロジーの話も出てくるので、既に何度かイベントでお話したのですが、全体を話そうとすると散漫になってしまい、不本意な感じでトークが終わってしまったので、今回は住まいの話にしぼってお話しようと思います。ここがいちばん面白いんじゃないかと思います。

住まいといっても、家の間取りなどの話ではなく、住まい方そのものがこれからどう変わっていくのか、という話です。

この本のテーマで大きく扱っているのが「街に暮らす」という概念です。マンションなのか、一戸建てなのか、分譲なのか賃貸なのか……というふうにみんな家を決めるけれど、もうちょっと街全体を眺め渡してみて、「街のなかで我々は暮らしている」という発想が大事なのではないか。

先にメインテーマを提示します。

いま、すごい勢いで衣食住がミニマルになってきています。例えば、着るものはストレッチの入った柔らかい素材が登場して、ほとんど裸で暮らしているのと変わらないくらい、真冬でも薄い服で暮らせる。荷物もどんどん少なくなって、小さなバッグひとつでどこへでも行けるようになりました。家の中もすごくシンプルになり、モノは少ない。断捨離という言葉が流行ったり、ミニマリストが流行ったり、どんどんシンプルになってきている。100年後にはたぶん、スマホもウェアラブルもなくなって、電子機器みたいなものは脳内に埋められて、服も見た目はほとんど裸の原始人と変わらなくなって。一見、有史以前のように野山で暮らしているように見えても、その裏側では猛烈にテクノロジーが動いていて暮らしを快適に支えていて、ブラックな仕事もなく、穏やかに人とつながるゆるゆるとした暮らしが、ひょっとしたら実現しているかもしれない。そういう遠い未来のビジョンを考えながら、今回の本を書きました。

衣食住がミニマルになるとどうなるかというと、ミニマルになればなるほど、外に向かって開かれる必要がある。家の中になにもないと、外に行かざるを得ない。外に開かれる感覚が、ミニマルの裏返しなんじゃないでしょうか。ミニマルというとどうしても、永平寺の雲水みたいな生活をイメージしてしまうけど、それじゃあ辛いだけですよね、人間が本来持っている欲望もあるし。その欲望を内側ではなく外側で満たす。人とつながったり、外で何かをしたり、そういうのがこれからの暮らし方ではないか。

「ゆるゆる」という言葉がこの本の重要なキーワードで、僕はすごく大事だと思っています。例えば「食」でいうと、“おいしいものが食べたい”、“からだに良いものが食べたい”と思って「無農薬」「有機野菜」「オーガニック」という方向に行くのだけど、行き過ぎると原理主義になってしまって、オーガニック以外は絶対食べるな、という話になってしまいがちです。それはそれで生きづらいですよね。そうじゃなくてもっと、コンビニ弁当も食べたって良いというくらいの「ゆるさ」が大事で、そういう感覚を保ちながらどんどんミニマル化していく、というのがこれからの時代なんじゃないか。そういうことを「住まい」に落としこみながらお話していきます。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

初回を読む
そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

hokuronoke3000 引っ越しで感じたけど捨てるの本当大変やったわ。 約1年前 replyretweetfavorite

YappyHappy0712 【必ず行く店がつぶれたら困るので、一生懸命「育てる」】 この感覚。僕らがローカルでやろうとしているのは、これ。でもひとりでは限界があるので、お店の応援団を作る。そこにひとつずつコミュニティができる。 https://t.co/YKRqG5Lq5R 約1年前 replyretweetfavorite

how4show 「ミニマルになればなるほど、外に向かって開かれる必要がある。」そうだよなぁ 田舎だとどうなるか 約1年前 replyretweetfavorite

sakamaru77 暮らしを住宅の中だけで完結させるのではなく、街全体で考えることに気づかされました。> 約1年前 replyretweetfavorite