原文:https://www.nasa.gov/feature/journey-to-the-center-of-icy-moons
ジュールベルヌの古典的SF『地底旅行』(センター・オブ・ジ・アース)といえば、活字を読まない人でも、東京ディズニーシーのアトラクションで馴染みがあるだろう。この小説では、オットー・リンデンブロック教授と仲間たちが科学的調査のためにアイスランドの火山の火口の中へと勇敢に入り、広大な地底の海など様々な驚くべき発見をし、絶体絶命の危機を乗り越えて地上に帰還した。まさにこれは、我々が木星の衛星エウロパや、土星の衛星エンセラドスでしたいと思っていることである。既にドローン潜水艦を用いてこれらの衛星に存在する地底の海を探査するコンセプトは提案されている。しかし、いかにして分厚い氷の層の下に隠された地底の海に到達するかは、まだ未解決の問題である。僕のチームはICE (Icy-moon Cryovolcano Explorer、氷衛星の氷火山探査)と呼ばれるコンセプトを提案し、NASA Innovative Advanced Conceptプログラムに採択され、10万ドル(約1000万円)の研究費を獲得した。これは、まず氷衛星の表面に着陸し、氷火山の火口まで移動したのち、その噴出口の中への入り、科学的調査をし、そして究極的にはドローン潜水艦を放出して地底の海を探査するというコンセプトである。
Credit: NASA/JPL
ICEは3つのモジュールからなる。DM (Descent Module, 下降モジュール)、SM (Surface Module、表面モジュール)、そしてAUV (autonomous underwater vehicle,ドローン潜水艦)である。DMはAUVを持って噴出口の中を下降する。その際、熟練した登山家のように、壁面のクライミング、ケーブルによるぶら下がり、跳躍など、様々な技術を組み合わせる。噴出する超音速の水蒸気のジェットは、密度が非常に低いため、動的圧力(楽観的な見積もりでは1 Pa程度)は下降の妨げにはならない。SMは表面に残り、RTGまたは太陽電池により発電し、また地球への通信を担う。DMはケーブルを介して電力供給と電力と通信をSMに頼ることで、サイズと重量を軽減する。DMは高度な人工知能を搭載し、周期的な噴出などダイナミックに変化する環境に柔軟に適応したり、予期せぬ異常に対処したりする。DMが地底の海に到達すると、AUVを放出し、生命を育んでいる可能性のある地底の海を探検する。
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