定期預金の金利が13%!?
日本ではずっと超低金利が続いていて、銀行にお金を預けてもスズメの涙のような利息しかつきません。そんなときに、定期預金の金利が13%だったらどんなにいいでしょう。これはお伽噺ではなく、れっきとした大手銀行が提示している金利です。ただし、ベトナムでの話ですが。
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今年(2012年)の3月にひさしぶりにホーチミン市の友人を訪ね、ついでに銀行に寄ってみました。何年か前に口座をつくったものの、ずっと放置していたからです。私の口座は金利のつかない当座預金口座だということで、「あなたは定期預金にすべきね」と言って窓口の女性が持ってきてくれた金利表を見て、思わず目が点になってしまいました。普通預金の金利は3%程度ですが、1年定期はなんと13%なのです。
年利13%というと、仮に100万円を預ければ1年後は113万円、10年後には300万円、20年後には1000万円に増えることになります。世の中にこんなウマい話があるのでしょうか。私が訪ねたのはベトナムでも最大手の銀行の本店ですから、年利13%がウソのはずはありません。ただし2013年は金利が下がっているかもしれないので、同じ金利でいつまで預けられるかはわかりません。「いまがチャンスよ」と言う彼女の言葉に乗せられて、思わず定期預金口座を開いてしまいました……。
ところで、なぜ日本の金利が0・1%なのに、ベトナムは13%なのでしょうか。これが、今回のテーマです。
インフレ率に左右される金利の価値
この謎を解くには、名目金利と実質金利の話をしなければなりません。といっても、これはぜんぜん難しい話ではありません。物価(モノの値段)が上がることをインフレといい、物価が下がることをデフレといいます。ここではそれを、生活コストで考えてみましょう。
たとえば、食費や住居費、趣味の出費なども含め、1年間で500万円の生活費がかかるとします。インフレではすべてのコストが上がっていきますから、2%のインフレだと2年目が510万円、3年目が520万円と、同じ生活をしていても出費はどんどん増えてしまいます。
それに対してデフレなら生活コストが下がりますから、2%のデフレだと2年目の出費は490万円、3年目は480万円と、知らないうちに生活が楽になっていきます。
このとき、銀行に500万円を金利2%で預けているとしましょう。2%のインフレでは、預金の増え方と生活コストの増え方はまったく同じなので、預金を生活費にあててしまえば手元には1円も残りません。このとき、実質金利は0%です(0円÷500万円)。
一方、デフレなら自然に出費が減っていくのですから、2%の預金はものすごく有利です。1年目では10万円の利息(500万円×2%)がついて預金は510万円になりますが、生活コストは490万円に下がっているのですから、差し引きの利益は20万円。このとき、実質金利は4%(20万円÷500万円)です。
この連載について
カモにならずに自分のお金を増やす方法
人気作家・橘玲さんが、独自の視点で金融市場、マネーのカラクリを解き明かす連載です。クールにお金について考えるための最適なレッスンとなるでしょう。
コメント
fujisamami 金利を考えるとき、インフレ率って意識しないよなあ。実質金利って重要な概念のはずなのに。→第七回 名目と実質の話 |橘玲|cakes(ケイクス) https://t.co/pyGfiE4h6s 約9年前 ・ reply ・ retweet ・ favorite
DragonLimit 橘氏の珠玉の言葉は、チミたちを1ランク上に導いてくれるだろう。怪しいノマドとかやってないで、こういう思考や視点を身に付けよう。 そんな若者が増えれば日本はまだ戦える。『カモにならずに自分のお金を増やす方法 』橘玲 https://t.co/nexZnd0cha 約9年前 ・ reply ・ retweet ・ favorite