第7回 名目と実質の話 

長い間、超低金利が続いている日本。金利0・1%では、100万円を1年間預けても利息は1000円しかつきません。そんななか、1年間の定期預金で13%の利息がつく国があるといいます。ベトナム――。橘さんが旅行先で立ち寄った銀で勧められたという定期預金。なぜそんな夢のような預金があるのか。そのカラクリを教えてもらいましょう。(『いきいき』2012年7月号より転載)

定期預金の金利が13%!?

日本ではずっと超低金利が続いていて、銀行にお金を預けてもスズメの涙のような利息しかつきません。そんなときに、定期預金の金利が13%だったらどんなにいいでしょう。これはお伽噺ではなく、れっきとした大手銀行が提示している金利です。ただし、ベトナムでの話ですが。

今年(2012年)の3月にひさしぶりにホーチミン市の友人を訪ね、ついでに銀行に寄ってみました。何年か前に口座をつくったものの、ずっと放置していたからです。私の口座は金利のつかない当座預金口座だということで、「あなたは定期預金にすべきね」と言って窓口の女性が持ってきてくれた金利表を見て、思わず目が点になってしまいました。普通預金の金利は3%程度ですが、1年定期はなんと13%なのです。

年利13%というと、仮に100万円を預ければ1年後は113万円、10年後には300万円、20年後には1000万円に増えることになります。世の中にこんなウマい話があるのでしょうか。私が訪ねたのはベトナムでも最大手の銀行の本店ですから、年利13%がウソのはずはありません。ただし2013年は金利が下がっているかもしれないので、同じ金利でいつまで預けられるかはわかりません。「いまがチャンスよ」と言う彼女の言葉に乗せられて、思わず定期預金口座を開いてしまいました……。

ところで、なぜ日本の金利が0・1%なのに、ベトナムは13%なのでしょうか。これが、今回のテーマです。

インフレ率に左右される金利の価値

この謎を解くには、名目金利と実質金利の話をしなければなりません。といっても、これはぜんぜん難しい話ではありません。物価(モノの値段)が上がることをインフレといい、物価が下がることをデフレといいます。ここではそれを、生活コストで考えてみましょう。

たとえば、食費や住居費、趣味の出費なども含め、1年間で500万円の生活費がかかるとします。インフレではすべてのコストが上がっていきますから、2%のインフレだと2年目が510万円、3年目が520万円と、同じ生活をしていても出費はどんどん増えてしまいます。

それに対してデフレなら生活コストが下がりますから、2%のデフレだと2年目の出費は490万円、3年目は480万円と、知らないうちに生活が楽になっていきます。

このとき、銀行に500万円を金利2%で預けているとしましょう。2%のインフレでは、預金の増え方と生活コストの増え方はまったく同じなので、預金を生活費にあててしまえば手元には1円も残りません。このとき、実質金利は0%です(0円÷500万円)。

一方、デフレなら自然に出費が減っていくのですから、2%の預金はものすごく有利です。1年目では10万円の利息(500万円×2%)がついて預金は510万円になりますが、生活コストは490万円に下がっているのですから、差し引きの利益は20万円。このとき、実質金利は4%(20万円÷500万円)です。

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fujisamami 金利を考えるとき、インフレ率って意識しないよなあ。実質金利って重要な概念のはずなのに。→第七回 名目と実質の話 |橘玲|cakes(ケイクス) https://t.co/pyGfiE4h6s 約5年前 replyretweetfavorite

sadaaki 金利が13%のベトナムとゼロの日本で、どっちで預金したほうがトクなのか?というお話。/第七回 名目と実質の話 |橘玲| 約5年前 replyretweetfavorite

DragonLimit 橘氏の珠玉の言葉は、チミたちを1ランク上に導いてくれるだろう。怪しいノマドとかやってないで、こういう思考や視点を身に付けよう。 そんな若者が増えれば日本はまだ戦える。『カモにならずに自分のお金を増やす方法 』橘玲 https://t.co/nexZnd0cha 約5年前 replyretweetfavorite

wootaro 橘さんの本とかこういうのを買って読んでもお金が増やせない人はそれこそ橘さんの 約5年前 replyretweetfavorite