街の3風景が混淆した演劇人の小さな城【下北沢 ザ・スズナリ】

2020年の五輪開催を見据えて、東京の街は大きな変貌を遂げつつあります。その危機感から、今ならまだ間に合う、今しか会えない、昭和の古き良き風景を伝えるべくスタートした本連載。
第9回目は、演劇のメッカ・下北沢にあり、有名な本多劇場よりも歴史が古い建物「ザ・スズナリ」。木造アパートと飲み屋横丁、それに劇場が一緒になった世にも不思議な造りにして、今も多くの演劇人に愛される、熱気の詰まった空間へ。


アパートであった2階部分は、ロビーや事務所、楽屋などに改装され不思議な魅力を湛えた空間となっている。

木造アパート+飲み屋横丁+劇場。足して一つになっていると言われても、ちょっと何言ってるかわからないと言われそうだが、まさしくその三位(さんみ)が一体となった、演劇関係者なら知らぬ者はない建物が実在する。それが下北沢駅南口から歩いて数分のところにある〈ザ・スズナリ〉である。昭和43年築の木造2階建てアパートの2階部分を改造し、昭和56年に稽古場を設けたのがはじまりなのだが、手がけたのは本多一夫氏。言わずと知れた下北沢を演劇の街に育てた、本多劇場他複数劇場の経営者である。

●  ●  ●

この〈ザ・スズナリ〉、昭和57年開場の本多劇場よりも古い。1階はもともと、真ん中の通路に沿って飲み屋数軒が入っていたが、2階は普通の六畳一間が20ばかりあった。そこを取り払って1階から鉄骨を入れ補強し、天井を高くし防音工事も施して、養成所の研究生たちの稽古場とした。つまり翌年に控えた本多劇場完成に備えて、もともとは作られたのである。そのうち、「稽古場だけにしておくのはもったいない」という声が演劇関係者から上がり、晴れて劇場としてオープンしたのだった。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

2020年五輪の話題が「光」なら、消えゆく昭和の風景は「翳」。まぶしい光でなく翳にこそ惹かれる、そんな人々に向けた渾身の一書!

この連載について

初回を読む
東京ノスタルジック百景 シーズン2 ~今見ておきたい昭和の風景

フリート横田

ライター兼編集者として、数々の街歩き取材を重ねてきたフリート横田氏。著書『東京ノスタルジック百景』からのcakes連載が好評を博し、満を持して書き下ろしの連載がスタート。2020年の大イベントを控え、急激に変化しつつある東京。まだわず...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

msk3345 {コラム} 8ヶ月前 replyretweetfavorite

yuko88551 〔コラム〕 8ヶ月前 replyretweetfavorite

tks564bys0000 【コラム】 8ヶ月前 replyretweetfavorite

wol564b =コラム= 8ヶ月前 replyretweetfavorite