小室哲哉が見出す「音楽の未来」
世界のエンタテインメント産業の趨勢は「ロングテールとモンスターヘッドが二極化した状況」に向かっている。グローバルなポップ・ミュージックの市場は、無数のニッチと、ごく一部の突出したメガヒットとの両極に分断されつつある。ストリーミング配信とSNSの普及がそれを加速していく。
こうした未来をどう思うか。ポップ・ミュージックの先行きをどう捉えているか。本書のインタビューに登場してもらった小室哲哉、水野良樹、unBORDEレーベルヘッドの鈴木竜馬の3名に尋ねた。
小室は、アデル『25』が世界中で記録的なヒットとなったことについて「音楽の未来への明るい材料だと思います」と語る。そして、その成功の理由を「圧倒的な歌唱力にある」と分析。数十億人に一人のレベルの才能が世界的な成功を収める時代になってきているということを、ポジティブに捉えている。
(PHOTO: Getty Images)
「全世界の音楽業界という意味では、アデルのような存在が光明になっていると思います。音楽の力だけでたくさんの人々に『なんだかわからないけど、すごい』と言わせられるかどうか。
歌唱力だけじゃなくてもいいんです。ジェイ・Zやエミネムにしても、圧倒的な迫力がある。そういうカリスマ性を持っている人は、やはりこの先の音楽業界にとって明るい兆しとなってくれるんじゃないかと思います」
ただ、日本の音楽シーンからそういった世界的なカリスマを生み出すのは現時点では難しい。そのためにも学ぶべきことは多いと小室は言う。
「やっぱり向こうの人たちを見習うということは大事だと思います。K-POPの担い手にも見習わなきゃいけないことがたくさんある。彼らは英語力もあるし、ハリウッドやニューヨークのエンタテインメントを死ぬほど勉強していますから」
巨大な才能の持ち主が「圧倒的勝者」となる。日本のポップ・ミュージックにおいてもそういった未来が訪れるというのが、小室の見方だ。
「僕らがしなければいけないのは、なんとかして原石を見つけるという作業だと思います。僕も日々、それをやり続けている。才能を見つけて、育てていきたいですね」
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