「がんばったがダメ」
それから約一年が過ぎた。その間には東日本大震災もあった。コード譜を作ってくれた彼女とは、3.11の頃にはまだ会っていたように思う。余震の続く日々の中、「『FOK46』と名乗って弾き語りのライブを始めようと思う」と僕が言い出し、彼女にポカ〜ンとされた記憶があるからだ。
「…オーケンがAKB48に入るの?」
「じゃなくて、FOK46…フォーク・オーケン46歳って意味さ。弾き語りの時の限定名称だよ」
「ふ〜ん…FOK46ね…センターは誰?」
「い、いや、一人だから。いやあのね、AKB48の女の子たちをテレビで見ていてね、彼女たちは、アイドルという過酷な仕事によって、諦念とか挫折とかなんだとか、なんとなく日々をボンヤリ生きてる人々のかわりに成長するためのっつーか、まあそうだね簡単に言って、人が現状から、一歩踏み出すための通過儀礼ってやつだよ。それを今リアルで毎日繰り返していると思うんだ、少女たちが。オレはもう46歳のおっさんだけれど、やっぱりさ、今の自分からまた一歩踏み出したいと思う部分では、一緒だと思うわけ、少女たちと」
「…オーケン、まゆゆだね」
「…い、いや、まゆゆではないけどさ、まゆゆ的な意気込みというかさ。ま、単純に『大槻ケンヂ(弾き語り)』でやるより最初はインパクトもあるじゃない。それで毎回、弾き語りやピンで活動しているミュージシャンをゲストにお招きして、アドバイス、いや、薫陶をちょうだいできたらうれしいかと思っていてね」
「たとえばどなたをお招きするの?」
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