アデルの記録的成功
ストリーミングサービスへの限定配信のみがヒットの条件になっている、というわけでもない。まったく逆の例もある。
アデル『25』がその代表だ。ロンドン生まれの歌姫が2015年11月にリリースした3枚目のアルバムは、ポピュラー音楽の歴史に残る記録的なメガヒットを成し遂げた。
(PHOTO: Getty Images)アデル
『25』は、あえてリリース時点ではアップル・ミュージックやスポティファイなどのストリーミング配信に楽曲を提供せず、従来通りのダウンロード配信とCDのみの形で発売された一枚だ。
結果、アルバムはリリース初週に全米で338万枚、全英で80万枚を売り上げ、アメリカではイン・シンク『ノー・ストリングス』(2000年)、イギリスではオアシス『ビー・ヒア・ナウ』(1997年)が持っていた数字を上回る、史上最多の初週セールス記録を達成した。
世界中で同時にリリースされたアルバムは各国でヒットとなり、計32ヵ国でチャート1位となった(ちなみに日本では7位だった)。
規格外のヒットはその後も続いている。2016年5月には全世界で1800万枚のセールスを達成。その後6月にはようやくストリーミングサービスに解禁され、その再生回数が再びチャート順位を押し上げる形でロングヒットを続けている。
ここでの重要なポイントは、今の時代も音楽シーンに「スターが生まれている」ということだ。それも、グローバルな規模で圧倒的なスケールの成功をおさめるアーティストが登場している。
アデルは間違いなくその代表だ。2008年にイギリス最大の音楽授賞式「ブリット・アワード」の批評家賞を受賞し注目を浴びた彼女は、同年にリリースしたデビュー作『19』でそのソウルフルな歌声が絶賛され、若き実力派女性シンガーとしての座を揺るぎないものにする。
さらに2011年にリリースされた『21』が決定打となった。ファッション性やポップアイコンとしての存在感、セレブスターとしての話題性ではなく、純粋な歌の力だけで支持を広げた。結果、アデルは翌年のグラミー賞の主要3部門を独占。アルバムはロングセールスを続け、その売り上げは全世界で3000万枚となる。
そんな状況の中、4年ぶりのアルバムとして発表されたのが『25』だった。ドラマティックな楽曲と圧倒的な表現力を持った歌声が、世界中でセンセーションを巻き起こしたのである。
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