「今すぐ行きます!!!!!」
池崎のLINEは無駄に力強かった。でも、びっくりマークの数の分だけ、ユウカの心は高鳴った。
「わかった。じゃあ、お店で待ってるね」
でも、返信はそっけなく。
池崎への気持ちがこんなことで盛り上がりすぎないように。
ユウカはまだ自分の心をコントロールしたかった。どうしようもなく空いた心の隙間は誰にも気付かせたくなかった。
女は心の隙間が生まれやすいと男の人は思っているかもしれないが(確かにそういうところもあるが)、実際は、ほんの少し誤解されていると思う。
もしも、普段何もなければ、心に隙間は生まれない。
「私いまそういう気分じゃないんだよね」と自虐ネタに走りながら恋人がいない自慢だってできる。心の中は無風の状態だ。風さえ吹かなければ女の心は揺れない。
だけど、男と出会って言い寄られて、触れあうと、女の心には跡が残る。女の心の中にはその男の分身ができる。
たとえ、その男と進展をしなかったとしても、女の心には風が吹く。その分身がいる場所を中心にして、対流が起きる。その時から、心の中には寂しいという感情が生まれ、「いない」が強調される。「いない」が強調されるから、欲しくなる。だから、夜の女の心は隙間だらけだ。
2ヶ月前のユウカは、ひとりでもなんとも思わなかったけど、今はひとりだと「相手がいない」という感情に支配される。
池崎は店にやってくると、ボーイにすぐボトルを注文したらしい。
(私が席に着いてからでいいのに)
そんな夜遊び慣れてないところもまた、池崎の印象を良くした。