音楽産業が抱えていた閉塞感の正体とは

所有からアクセスへ──。その大変化に日本は乗り遅れています。一体なぜでしょうか?
音楽ジャーナリスト・柴那典さんがその実情と未来への指針を解き明かす話題書『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)。その内容を特別掲載します(毎週火曜・木曜更新)。

世界の潮流に乗り遅れた日本

 所有からアクセスへ──。
 音楽の聴かれ方は抜本的に変わりつつある。

 しかし、日本の音楽業界は、はっきりとその潮流に乗り遅れている。

 日本レコード協会が2016年4月に発表した「日本のレコード産業2016」を見ると、2015年の音楽ソフト(CD、DVD、ブルーレイなど)の売り上げは2544億円と、前年比ほぼ横ばいを続けている。
 有料音楽配信売り上げは471億円(前年比108%)となり、そのうち定額制ストリーミング配信サービスの売り上げは124億円(前年比158%)。

 ストリーミング配信の売り上げは大きく伸びているが、全体に占める割合はまだ決して大きくはない。パッケージメディアの売り上げが音楽市場の7割以上を占めている。
 「売れない」と言われ続けているCDがいまだに市場の主軸を占め、ダウンロード配信がいまだにデジタル音楽配信の多くのシェアを占めているのである。

 なぜ日本では海外に比べて定額制ストリーミング配信サービスの普及が進んでいないのだろうか?

 理由はシンプルだ。邦楽の最新曲が網羅されていないのである。配信を許諾していないアーティストが多く存在する。そうすると、リスナーにとってはCDを買うかレンタルするか、もしくはダウンロードする以外に楽曲を聴く選択肢がない、ということになる。

 各国でそれぞれの音楽配信に最新ヒット曲がどれくらいあるかを数えてみると、その差は歴然となる。

 2016年9月末時点で、1ヵ月における週間チャートの上位50曲の4週間分、のべ200曲のうちどれだけがストリーミング配信サービスに提供されているのかを数えてみた。
 すると、アメリカとイギリスでは、スポティファイ、アップル・ミュージック、共に網羅率100%。後述するアデルのように配信開始を遅らせる例もあるが、基本的には、すべてのヒット曲がストリーミング配信に提供されている。

 対して邦楽アーティストの新曲が提供されている割合は非常に少ない。ビルボードの「ジャパンHot100」の上位50曲の4週間分のうち、アップル・ミュージックに提供されているのは43%だ。LINE MUSICやAWAなど他のサービスもほぼ同じ数字となっている。
 海外と比べて、かなりの差がある状況だ。YouTubeにミュージックビデオを公開しながら、ストリーミングには配信されていない楽曲もある。

 若い世代の中にはもはやCDプレイヤーを持っていないリスナーも多い。きわめて不便な状況を強いていると言えるだろう。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

音楽の未来、ヒットの未来はどこにあるのか?

この連載について

初回を読む
ヒットの崩壊

柴那典

「心のベストテン」でもおなじみ音楽ジャーナリスト・柴那典さん。新刊『ヒットの崩壊』では、アーティスト、プロデューサー、ヒットチャート、レーベル、プロダクション、テレビ、カラオケ……あらゆる角度から「激変する音楽業界」と「新しいヒットの...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

nakanomusic https://t.co/YKzL1IaC57 https://t.co/tYc0PhArU7 5ヶ月前 replyretweetfavorite

yukiooo_00 ストリーミング配信の賛否はとりあえず置いといて、音楽業界のガラパゴス化については本当に深刻ですよね。クラシックは特に。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

GeeeeN2525 そーなのよねーAppleMusicにしろSpotifyにしろ邦楽は配信率低すぎて 結局まだ契約するほどじゃねーなあってなる。 5ヶ月前 replyretweetfavorite