言いたいことも言えないこんな世の中と反町隆史

四代目の『相棒』として、映画にも出演中の俳優・反町隆史。最近は見る機会が減りましたが、30代以上の人間にはミュージシャンとしての活動も印象に残っているはず。今回の「ワダアキ考」は、反町の名曲から「言いたいことも言えないこんな世の中」を武田砂鉄さんが考えます。

反町と2ショットを撮れるプリクラ

このところ、共謀罪(テロ等準備罪)についての原稿を書く機会が多い。もちろん反対。これまで三度も廃案になってきたこの法案が、どのような議論を巻き起こしてきたのか、過去の議論を振り返っていると、「言いたいことも言えない世の中になってしまう」といった懸念に度々出合う。その瞬間に「ポイズン!」と呟いたが最後、反町隆史についての思索が止まらなくなる。「言いたいことも言えないこんな世の中」でツイート検索してみると、この歌詞はちょっとしたギャグとして定期的に方々で放たれている。今、『相棒』での水谷豊の相手役以外では、さほどテレビで見かけない反町は、このフレーズや隣接する思い出の中で語られることが多い。

同級生女子の間でプリクラブームが巻き起こっていた高校時代、学校へ向かうY字路の隅っこに唐突に設置されたのが、反町と2ショットを撮れるプリクラだった。フレームの左半分に反町が固定されており、右の空間に自分の顔を入れ込むもの。反町との2ショットを恥ずかしがった女子たちはそこで撮ることを回避していたが、その回避が、男子たちが軒並み反町との2ショットプリクラを所有する、との事態を生じさせた。『ビーチボーイズ』『GTO』で人気を不動のものにしていたとはいえ、プリクラを普段撮らない面々が反町との2ショットプリクラだけを持ち歩いていた。そんな記憶は色濃く、当然、今に至るまで「言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズン」は、雑談の端々に顔を出し続けている。

U2を「単純に、根性入っていると思う」と評す

当時考えたことがなかったのだが、そもそも、言いたいことも言えないこんな世の中とはどんな世の中だったのだろうか。反町が最初に夢中になった音楽は尾崎豊である。小学校高学年で「15の夜」を聞き、「自分のことを歌っているみたいだなと思った」(反町隆史『Song Of Love』)という。あの頃は今日のことしか考えなかった、明日のことなんてまったく考えていなかった、と反町は回想するのだが、小学生って基本的に今日のことしか考えない生き物だった気もする。

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2017-01-25

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

mitaniya77 言いたいことも言えないこんな世の中とはどんな世の中だろうか。 この連載のハセガワシオリさんの似てないイラストが好き。 https://t.co/n4b2YonaPI 2年弱前 replyretweetfavorite

Neishan48 カレはなにも考えていないんだね……。  2年弱前 replyretweetfavorite

jyjbiniobachan 共謀罪こと「テロ等準備罪」と「ソリマチ」を絡め取れるのは日本で唯一この方だけだわぁ・・・ 2年弱前 replyretweetfavorite

Josephine_smk いつもながら面白い。今回は武田さんが「ポイズン!」と叫んでるのを想像しつつ読んだのでおかしさ7倍増w 【 2年弱前 replyretweetfavorite