1日4時間集中できれば生産性は格段に上がる

1日のうち、高い集中力を発揮できるのは4時間が限界です。でも逆にいえば、4時間集中できれば仕事の生産性は格段にアップします。予防医学研究者の石川善樹さんは、「集中できないのは意志が弱いからではなくその方法がわかっていないから」と言います。その方法について書いた石川さんの最新刊『仕事はうかつに始めるな』の一部を特別掲載いたします。

はじめに

 現代ほど、ひとつの仕事に集中することが難しくなっている時代はありません。

 デスクでパソコンを開き、資料作成にとりかかってはみたものの、すぐにスマホでメールやメッセージをチェックしてしまう。インターネットで調べものをしていたはずが、いつの間にか関係ないニュースを読みふけっている。いくら頭では「集中しなきゃ」と思っていても、気がつくと別のことに気を取られていることが多いのではないでしょうか。

 平均的なビジネスパーソンは、1時間に 30 回メールチェックをしているといわれています。これでは集中力どころの話ではありません。

 実際、時代が進めば進むほど、人間が集中できる時間は短くなっています。マイクロソフト社のレポートによれば、現代人が連続して集中できる時間は、2000年では 12秒でしたが、2015年にはとうとう8秒になってしまったそうです。さらに面白いことに、どうやって調べたのか、金魚の集中は9秒続くらしいので、人間の集中力はついに金魚以下になってしまったと報告されています。

 20 世紀の知の巨人ハーバート・サイモンは、すでに1960年代に「情報が豊かになると、注意の貧困を招く」と予言していました。金魚に負ける現代人の「注意の貧困」は、いまや末期的症状といってもいいかもしれません。わたしたちは情報を消費しているようでいて、じつは情報に消費されてしまっているのです。

 これだけ集中することが難しい状況で、わたしたちは、どうすれば集中力を発揮することができるでしょうか。

 その具体的な方法をお伝えするために書いたのが、本書『仕事はうかつに始めるな』です。

 変わったタイトルだと思われる方も多いでしょうが、このタイトルは、物事に集中するための極意を一言で述べたものです。それは、仕事に集中できるかどうかは、仕事をする前の準備段階で決まってしまうということです。

 わたしがこれを実感したのはハーバード大学で学んでいたときです。入学して最初にいわれたのは「うちの大学は処理しきれないぐらい大量の宿題を出す」ということでした。なぜならハーバード大学は、将来のリーダーを養成する学校だからというのが理由です。

 よく意味がわからなかったので、「どういうことですか?」とたずねると、次のように教えてくれました。そもそもリーダーの仕事とは、処理できないほど膨大な情報の中で意思決定をすることだ。そのための訓練をいまからするのだ、というわけです。「なるほど」と納得したものの、実際に見たことがないほど大量の宿題が出て途方にくれました。最初は根性で処理しようとがんばったのですが、足腰が立たなくなるほど疲弊して、これではもたないと痛感しました。

 そこから、がむしゃらな努力ではない方向でものごとを処理していくことを考え始めたのです。

 実際、リーダーという立場でなくとも、これほどの情報化社会の中では、現実の時間内に情報を処理し終えることはありません。さらにいえば、そこまで大量の仕事が目の前にないときでさえ、ぼんやりと仕事を始めてしまったら、あとはもうメールやネットに誘惑されるがままです。「さあ、集中するぞ」といくら念じたところで、集中はできません。8秒で集中は途切れ、 10 秒後には、スマホに手を伸ばしていること必至です。 だからこそ「仕事はうかつに始めるな」なのです。

 前著『疲れない脳をつくる生活習慣』では、最新の脳科学の研究成果を活用しながら、マインドフルネスと呼ばれる瞑想の方法や効果について解説するとともに、その効果をさらに高めるために、睡眠、姿勢、食事といった生活習慣をどのように改善すればいいかを具体的にアドバイスしました。

 多くの社会人は、マインドフルどころか、ストレスフルな生活を送ってしまっています。ですから、まずは生活を見直して、「不調」を「普通」に戻しましょう、というのがメッセージでした。

 それに対して、本書は「普通」から「好調」をどうつくるかに軸足を置いています。

 とはいえわたしたちは、朝から晩まで、つねに「好調」であり続けることはできません。なぜなら、「好調疲れ」を起こすからです。1日のうち、高い集中力を発揮できるのは4時間が限界です。

 でも逆にいえば、4時間集中できれば仕事の生産性は格段にアップします。というのは、圧倒的に多くの人は、1時間の集中すらままならないからです。

 スポーツであれ、研究であれ、ビジネスであれ、その分野のトップで活躍している人たちは、ここ一番というときに、集中力を発揮する術を身につけています。周囲の雑音さえ気にならないほど、目の前の課題に没頭する。「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる状態に入ると、そのパフォーマンスは桁違いに高くなることが科学的に知られています。

 そして幸いなことに、近年、フロー状態に入るためのテクニックについても、科学的な研究が数多く蓄積されてきています。本書ではまず、そのエッセンスをみなさんにお伝えし、集中力をコントロールするために「具体的に何をすればいいか」を解説しました。そのうえで、フローの条件、そもそもなぜフローが重要なのか、という少し抽象度の高い話をしています。

 集中力は仕事の効率アップだけでなく、生活の質とも密接に結びついています。脳はそもそも飽きっぽいので、仕事でもトレーニングでもなんとなくだらだらとやっていると、すぐに「つまらない」と感じてしまいます。そして、そのような状態が続くと成果も上がらず、余計に集中できなくなり、効率が悪化する。よって、継続的にパフォーマンスを上げられなくなるのです。

 いま、人生100年時代といわれます。集中力マネジメントは、飽きず、疲れず、情報に振り回されず、イキイキと人生をおくるための土台づくりともいえます。

 みなさんの有意義な人生のために、本書を活用していただければ幸いです。

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この連載について

働く人のための集中力マネジメント講座

石川善樹

人間の集中力はいまや金魚以下といわれるほど低下しています。平均的なビジネスパーソンは1時間に30回もメールをチェックしているともいわれています。ではスッと集中状態に入るためにはどうすればよいのか? 予防医学研究者の石川善中さんが、集中...もっと読む

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コメント

marie_harada "1日のうち、高い集中力を発揮できるのは4時間が限界" https://t.co/k6efvexgmv 9ヶ月前 replyretweetfavorite

byusjp "リーダーの仕事とは、処理できないほど膨大な情報の中で意思決定をすることだ。" via @takerui https://t.co/goV6UsnZn7 https://t.co/AlcfB75FKn #highlite 11ヶ月前 replyretweetfavorite

miwasowmen 石川先生の新刊発売中! 11ヶ月前 replyretweetfavorite

hagetemasu7 |石川善樹 @ishikun3 |働く人のための集中力マネジメント講座 1時間が限界だな。 https://t.co/wHghXceK5k 11ヶ月前 replyretweetfavorite