過渡期の続く音楽業界
前章で語ってきたように、10年代の日本の音楽カルチャー、アイドルもロックもひっくるめた新しい日本のポピュラー音楽を巡る状況には、これまでにない大きな可能性が広がっている。とても豊かな音楽シーンが生まれている。それが筆者の嘘偽りない実感だ。
しかし、ビジネスやマーケットの動向を見れば、決して先行きが明るいと言うことはできない。音楽ソフトの売り上げは落ち込みを続けている。ライブ・エンタテインメント市場は拡大しているが、それぞれの会場の収容人数が決まっている以上、動員数には上限がある。
第四章に登場したヒップランドミュージックコーポレーションの野村達矢も「現実はまだまだ音楽ビジネスの構造自体が崩壊している過渡期の段階」と、現状に危機感を持っていることを語る。
では、その先には何があるのか? ここでは、グローバルな市場動向を見据えた上で、音楽の未来、そしてヒットの未来について問題提起をしていきたい。
所有からアクセスへ
「消費者の要望は、音楽を『所有』することから、音楽に『アクセス』することへと変化している」
国際レコード産業連盟(IFPI)のフランセス・ムーアCEOは、こう告げた。2015年4月に発表したデジタル音楽市場調査結果のレポートの中でのことだ。
(PHOTO: Getty Images)
2015年という年は、世界のレコード産業にとって歴史的なターニングポイントになった。
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