錬金

学問なんか信じるな、ひらめきなんかあてにするな、大事なのは集中!

PC史に燦然とその名を残すカリスマ、西島和彦は”天才”と呼ばれるのを嫌った。「俺は天才のひらめきとか、信用せえへん。いざというとき頼りにならん。俺が人より優れているのは、集中力や。集中は困難を突破する力がある」西島は俺に力説し、こう続けた。「ムキになってやりこむこと。ハマりきった先で、突破できるもんがある」
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実践至上主義

 西島は1956年に神戸で生まれた。関西弁は、生粋の関西人のあらわれだ。

 祖母は名門の私立S学園の創設者で、両親もこの学校で教師だった。

 西島はお祖母ちゃん子で、祖母のほうも西島を溺愛した。後にアーキテクトを創業するときに資本金の300万円を借りたのは、祖母からだったという。

「貸してくれへんかったら死んだる! って、わめいたんや」

 という西島の無邪気さは、裕福な家庭に生まれ育った若者ならではだ。

 西島の家は祖母の代の前から教育者の家系だった。先祖には蘭学を修め、医療技術を指導した者もいる。住んでいた生家は鉄筋コンクリートの3階建て。部屋数は20あり、ヨーロッパの建築雑誌でデザインが表彰されたという。当時としても、相当な資産家だったようだ。

 西島は1964年に国内メーカーが開発したコンペットを、父親に買ってもらった。真空管式だった電卓を、新技術でトランジスター化した、初期中の初期のコンピューターだ。電卓を使わずに、四則演算をこなせるコンペットに、西島は衝撃を受けた。エレクトロニクスの可能性に目覚めた瞬間だった。

 中学生になるとリレーなどの部品を買い集め、自分で計算機を手づくりした。

 地元の中学を卒業してから、神戸では指折りの名門進学校に進んだ。

 物理部、天文部、美術部、写真部、図書部……あらゆる文科系のクラブに同時に所属した。文化祭の運営やコンサート、弁論大会の企画を手がけた。

 英語部とエスペラント部にも所属して、独自に堪能な語学を身につけた。多才ぶりに、学校の内外で「天才少年」と呼ばれた。

 けれど西島は、天才少年と呼ばれるのを嫌がった。

「俺は天才のひらめきとか、信用せえへん。いざというとき頼りにならん。俺が人より優れているのは、集中力や。集中は困難を突破する力がある。

 例えばトイレの電球は10ワット、机のスタンドは100ワット、スタジオの電灯は1キロワットや。ワット数が多いほど、明るくなる。でも1キロワットのライトでは、南青山から3キロ先の東京タワーは照らせへん。けれどレーザー光線ならどうや? 一発で東京タワーまで光は届くやろ。そのレーザー光線に必要なワット数はなんぼやと思う。0・05ワットや。

 トイレの電球は10ワットでも薄暗いのに、なんで0・05ワット程度で東京タワーまで光が届くんか。それは光が、集中しているからや。光のエネルギーをほんの一点に集中させれば、出力は小さくても遠いところに行ける。

 中途半端はダメやっていうことや。何でも必死に、掘り下げて、ムキになってやりこむこと。ハマりきった先で、突破できるもんがある。大事なのは、集中や」

 何かやり始めたら、周りが見えなくなる。

 リスクがあろうと失敗の可能性があろうと、集中しきる。それが西島の性格なのだ。

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PC市場で世界の頂点に君臨しつつあった日本は、あと一歩のところでなぜアメリカに後れを取ったのか? IT革命前夜、世界を変えた常識破りのカリスマたちの痛快な、失敗と成功――。その全真相をノベライズ。 「心が自由になれば、金も権力も...もっと読む

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コメント

HHIKARI7 合気道の真髄みたいだ。「大切なのは集中力とタイミング」 3年弱前 replyretweetfavorite

tipi012011 いいなぁ。噛み合う瞬間。 約3年前 replyretweetfavorite