3人でのランチが終わると、高畑は3人分の会計を払って店を出た。
店の外で「じゃあ、ぼくらはクリニックに帰るから」といって、高畑は一枚の紙切れを渡してきた。紙にはアルファベッドが羅列していた。
「メアド?」
「そう、ぼくはLINEをやらないから、だから、このGmailに空メールをしてくれたら、連絡先を交換したことになるだろう?」
「う、うん。わかった」
手を振ってクリニックの車に乗り込んだ2人を見送ったユウカは少し落胆していた。連絡先を欲しいと言ったのは向こうなのに、こんなやり方って、ずるいよね。それに空メールを送って、なんか事務的な感じ……。
紙切れをみると「coffeehablack@」って書いてある。ぷっ。
珈琲はブラックって(笑)。高畑の人と為りがよく表れてるメアドだ。
2月の前半は、こんな感じで過ぎていった。
高畑に送ったメールは空メールではなく、件名に「ユウカです」と入れ、本文は「ご馳走様でした。いつもこうやって女性を口説いてるんですか(笑)?」と書いて送った。そうしたら、高畑からは「ははは」とだけ書かれたメールが返信されてきた。なにそれ。
月曜日。週末は店と自宅の往復だけでほとんど外に出てなかったユウカは、気晴らしにジョンの散歩をかってでた。少しは身体を動かさないと。
しかし、なにも考えてないつもりでも、知らぬ間に高畑クリニックの方向へ足が向いてしまう。