田中慎弥「孤独の効用を語るべきだと思った」

長い引きこもり経験をもつ芥川賞作家の田中慎弥さん。自身の人生を”孤独寄りの道”だったと振り返ります。『孤独論~逃げよ、生きよ~』で綴ったのは、そんな自身の経験から見えてきた、孤独を肯定する生き方。多くの人々が「つながり」を求めながらも生きづらさを感じている今、田中さんが伝えたい”孤独の大切さ”に迫りました。

 田中慎弥さんによる初の語り下ろし本は、「孤独論」というストレートなタイトルに、目を引きつけられる。

孤独論 逃げよ、生きよ
孤独論 逃げよ、生きよ

 これは昨今ありそうでなかったテーマ。何しろ現在はインターネットがこの世を覆い、人はSNSのネタのために生き、いかなるときでも「つながって」いなければ人にあらずと言わんばかりの風潮。「ぼっち」でいることは全力で避けねばならず、最も忌み嫌われるのが孤独という状態だ。

 そこに真っ向から斬り込もうというのだから恐れ入る。
 それだけじゃない。組織に従属し甘んじているのを「奴隷状態」にあると喝破し、サブタイトルの通り、そこから「逃げよ、生きよ」と鼓舞する。なんと反時代的なことか。

 これらの過激な言葉、いったいどこからきたのだろうか。田中さんの胸中にいつも渦巻いていたものだったのか。

「これまでの半生で、人よりも孤独な時間を長く過ごしてきたのは自覚しています。兄弟はおらず一人っ子で、父を早くに亡くして家族が少なかったので、子どものころからわりと独りでいることは多かった。
 外で遊ぶより家で本を読んだりするのが好きで、友だちも少なかった。その延長で、今も作家という仕事をしているようなものです。自分の場合、孤独だった時間が今の仕事に確実に結びついているのだから、孤独を否定するわけにはいきません。いえ、むしろ孤独の効用を語るべきだと思ったのです」

群れたがる、つながりたがる生き方には、あまり共感できないということ?

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yuzumeets_an “集団でいることと孤独でいることのバランスが誰しもあって、重心がどのあたりにあるかは人それぞれでしょうが、私は孤独のほうに寄っているということなのでしょう” |山内宏泰|文学者の肖像 https://t.co/FuNGrZXnaC 9ヶ月前 replyretweetfavorite

mitaniya77 田中慎弥さん、いい顔になったなあ。 朝ドラの演者もこんな感じで年とってほしい。 9ヶ月前 replyretweetfavorite

yukiooo_00 人生は基本的にたいへんなものです。 そう思った方が楽になるのかもね〜 https://t.co/y6aA5B6nd5 9ヶ月前 replyretweetfavorite

0384zuka この表現。すごくいい。「集団でいることと孤独でいることのバランスが誰しもあって、重心がどのあたりにあるかは人それぞれでしょうが、私は孤独のほうに寄っているということなのでしょう。」【 9ヶ月前 replyretweetfavorite